日本経済新聞が7月に今春の選抜大会(春の甲子園)に出場した32校の部長(一部は監督)に実施したアンケート結果が興味深い。
8月6日付の記事によれば、回答した全30校のうち、熱中症対策として、高野連が検討を始めている「7イニング制への変更」については、「反対」が70%(21校)に上り、「とちらとも言えない」が30%(9校)で、賛成はゼロだった。反対理由には、選手の出場機会の減少や競技の質が変わることへの懸念が多かったという。
一方、7イニング制に代わる熱中症の代替案(自由回答、複数回答可)については、「開催時期の変更」が8校、「開催球場の変更」が3校あった。
アンケートには「7イニング制よりも開催地や開催時期の見直しのほうが優先課題だと思う」「万が一、熱中症で死者が出れば大会を開けなくなる」などと、猛暑と向き合う現場のリアルな声が寄せられていた。
どんな将来像を描くべきか
甲子園という舞台を目指し、あるいは野球というスポーツを通じて球児が仲間との絆を深めて成長を遂げていくプロセスは、高校野球の大きな魅力である。筆者も幼少期から高校野球に魅せられてきた。
一方で、高校野球だけが高校の学生スポーツではない、との反論も数多く聞く。甲子園ではなくても、あるいは高校野球ほどの注目度はない他競技においても、クラブ活動を通じた成長を遂げている高校生はたくさんいる。
選手の出場機会の観点からも、全国規模のトーナメントに議論の余地はないか。熱中症などは命の危険にも関わるため、高校野球だけを「聖域」ととらえてしまうことはリスクでもある。
受け継がれてきた歴史と伝統と、これからの未来の狭間で、高校野球はどんな将来像を描いていくか。高野連も猛暑への危機感があるからこそ、来年からDH制(指名打者制)を導入し、7イニング制についても都道府県連盟や加盟校、一般のファンを対象に実施した調査の回答を集約している。
プロ野球の巨人やメジャーリーグで活躍した上原浩治氏は8月3日、TBS系テレビ「サンデーモーニング」に出演した際、甲子園開催や9イニング制からの変更には否定的な意見を述べつつ、「一番は高校球児の声を聞いてほしい」と訴えた。
今大会では、智弁和歌山の山田希翔主将が開会式の選手宣誓で「自然環境や社会の状況が変化していく中で、高校野球のあり方も問われています。しかし、その魅力は変わりません」と強調した。甲子園にあこがれ、少年野球から練習を積んできた(いる)児童もいる。
健康面に配慮しつつも、熱闘と評されることもある高校野球の未来形は――。日本列島は晴れ間が戻り、甲子園期間中もまた厳しい暑さが戻ってくる。
