2026年1月14日(水)

プーチンのロシア

2026年1月14日

 2026年の年明け早々、国際政治は激しく動き出した。米トランプ政権が1月3日、ベネズエラに対する軍事的な奇襲作戦を実施し、首都カラカスで大統領夫妻を拘束した上でアメリカへ連行した。事実上の政権排除に等しいこの行動は、国際社会に大きな衝撃を与えている。

(ロイター/アフロ)

 ロシア外務省は直ちに、「ベネズエラ大統領マドゥロ夫妻がアメリカにいることが確認されたとの情報に関連して、われわれはアメリカ指導部に対し、これを見直し、主権国家の合法的に選出された大統領とその妻を解放するよう断固として求める。また、アメリカとベネズエラの間に存在するいかなる問題も、対話によって解決するための条件を整える必要性を強調する」との声明を発表した。

 メドヴェージェフ元大統領は、「トランプのチームは、自国の利益を推進するうえで、強硬かつ冷酷だ。マドゥロの打倒は麻薬とは何の関係もなく、ただ石油の問題だった。しかも彼らはそれを公然と認めている。アメ公たちに、はっきり言っておこう。今やお前たちには、ロシアを形式的にでも非難する口実すら残っていない」と悪態をついた。

 ロシアにとってさらに屈辱だったのは、1月7日にロシア国旗を掲げてベネズエラへ向かっていた石油タンカーが、米軍により拿捕された件である。ロシア下院の国際問題委員会のスルツキー委員長(自由民主党党首)は、国際水域でロシア国旗を掲げた船舶が拿捕されたことは、海洋法および国連条約に違反しており、「アングロサクソンによる21世紀の海賊行為」と怒りをぶちまけた。

 ただ、プーチン大統領がベネズエラ情勢に関し強いメッセージを発信することはなかった。もともとロシア政治は1月上旬くらいまでは冬休みモードで、大統領も1月7日にロシア正教クリスマスの国民向け挨拶を出すくらいしかしないものだ。それでも、ベネズエラ問題がロシアの国益にとっても重大であることを考えると、プーチン大統領がもっと激しい反応を示しても不思議でなかった。現実には、プーチンは奇妙な沈黙を保ったのである。

 おそらくそれは、ロシアにとりベネズエラ情勢が多面的な意味を持っており、ロシアの国際的地歩が掘り崩される恐れがある一方、ロシアがこれを奇貨として活路を開ける可能性があるかもしれず、情勢を慎重に見極めようとしていたからではないか。

 というわけで、以下本稿では、ベネズエラ事件のプーチン・ロシアにとっての収支勘定を考えてみたい。


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