2026年1月14日(水)

プーチンのロシア

2026年1月14日

石油利権の喪失は確実

 ロシアがベネズエラで抱えている実利で、最重要なものは、石油である。両国は世界的な石油産地であり、ともに重質原油を主要産品とするため、輸出市場や精製のパートナーという形で関係性が生まれてきた。ロシアによるウクライナ侵攻後は、制裁回避においても協力関係にあった。

 石油分野における近年の両国の接近は、チャベス前政権下の2000年代初頭に始まった。ロシアは、米国から程近い当地で政治的影響力を強化する好機を見出した。

 ロシア企業はベネズエラの油田開発に参入し、ベネズエラ側は数十億ドル規模の武器を購入した。ここで重要な役割を果たしたのがプーチンに近い国営石油会社・ロスネフチのセーチン社長で、同社は17年までに約80億ドルを投資したと言われる。

 しかし、アメリカの制裁により、ベネズエラの債務返済は滞り、20年にロスネフチは実質的にベネズエラから撤退を余儀なくされた。それを引き継いだのが、やはりロシア国営のロスザルベジネフチであった。同社は23億バレルの埋蔵量を持つ油田の開発権を保有している。

ベネズエラの国営石油会社PDVSA(ペトロレオス・デ・ベネズエラ)によって所有・運営されているエル・パリート製油所(AP/アフロ)

 今回の奇襲作戦後、トランプ政権は、中国やロシアをベネズエラの石油産業から排除しようとする姿勢を明確にしている。ロシアが権益を失うことは避けられそうもない。

 もっとも、ロシアにとって米国のベネズエラ侵攻による最大のリスクは、現地資産の喪失というよりも、世界的な原油価格下落の加速であると見る専門家が多い。これは、軍事費で火の車となっているロシアの財政にとっては、由々しい問題だ。

 ウクライナの政治学者であるオレシチュークによれば、アメリカとベネズエラの関係が正常化すれば、世界経済や原油価格に大きな影響を与える可能性があるという。「原油価格を下げる要因はすべてウクライナにとって有利であり、停戦交渉にも好影響を及ぼしうる。なぜなら、石油が安くなればなるほど、ロシアの収入は減り、ロシアが無限に戦争を続けられるという考えは、ますます現実味を失っていくからだ」とオレシチュークは指摘する。

 ただ、これについてベルリン・カーネギー・センターのワクレンコ研究員は、次のように慎重な見方を示している。「アメリカの一部に見られる熱狂も、ロシアの一部に見られる懸念も、ベネズエラの石油産業の実態に照らせば、現時点ではいずれも的を射ているようには見えない。この国が短期間で世界市場に大量の原油を供給することはできない。仮に新たな原油が供給されたとしても、それは採掘コストの高い原油であり、大きな利益を生むことはないだろう。それによって世界の原油価格を1バレル50ドル以下に抑え続けることは、ほぼ不可能である」

 ちなみに、これまではベネズエラ産原油の8割ほどが、中国に供給されてきた。これをアメリカが囲い込むことで、中国が別の供給源を求め、同じく高硫黄の重質油であるロシア産のウラル原油への需要が高まるという淡い期待も、ロシア側には生じているようだ。


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