2026年8月26日(水)

教養としての中東情勢

2026年8月26日

 トランプ政権は8月24日、イランへの新たな経済制裁を発表した。軍事的手段でイランを屈服させることはできず、「急がば回れ」の作戦に転換した。

2026年8月24日(月)、ワシントンの財務省で記者会見に臨むスコット・ベッセント財務長官。(AP/アフロ)

 主眼はイランと取引がある第3者への「2次制裁」だが、「期待外れ」との見方が強い。イラン最大の貿易相手国、中国に対し制裁を発動するかが曖昧なためだ。来月訪米する習近平国家主席への配慮で腰砕けになることが濃厚である。

「絵に描いた餅」

 発表した米国のベッセント財務長官によると、制裁はイランの武器や石油を運搬する航空や海運、革命防衛隊が使っている仮想通貨などのデジタル資産、イランの貨幣リアルを支える金、兵器関連技術の5分野が重点だ。各国との経済取引を断ち切ってイランを孤立させるのが狙いだ。

 トランプ大統領は発表に先立ち「かつてない規模の経済戦争になる」と指摘。第2次世界大戦で連合軍の勝利のきっかけになったノルマンディー上陸作戦のDデー(決行日)になぞらえ「経済版Dデーだ」と大見えを切り、史上最大の作戦になると強調していた。

 だが、長官は「即時制裁」には踏み込まず、対象国を名指しすることもなかった。「期待外れ」(米紙)との評価が一般的だ。イランの主要な貿易相手国は中国、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、イラクといったところだが、イランの石油輸出の90%を購入している中国が圧倒的な存在だ。

 「即時制裁」を発動しなかったことについて、長官は「悪い行いを改めさせる機会を与えるため」としたが、制裁が有効に機能するかは中国にかかっている。とりわけ国営石油会社に属さない「Teapot」と呼ばれる中国の独立系精油所、イランからの石油購入を支える中国の銀行の2つを制裁対象にしなければ、制裁は「絵に描いた餅」になってしまう。

 だが、トランプ大統領が改善傾向にある中国との関係をあえて悪化させてもこうした企業を制裁対象に含めるかという点については否定的な見方が多い。習近平主席が9月24日に訪米し、米中首脳会談に臨むことが決まっている現状ではなおさらだ。

 強い者には尻込みするトランプ大統領の癖が出かねない。習主席に強く出られず、制裁も有名無実化する可能性が高いだろう


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