1981年、アメリカで一冊の本が注目された。パット・チョート、スーザン・ウォルター著『America in Ruins』である。
アメリカでは30年代のニューディール政策以降、大規模なインフラ整備が行われたが、60年代からインフラ老朽化が顕在化した。さらに80年代からは毎年のように橋梁崩落事故が相次ぎ、深刻な社会問題となった。それはまさに、(邦題の)『荒廃するアメリカ』そのものであった。
一方、高度経済成長期以降、全国で整備された日本のインフラの多くは、今後10年のうちに老朽化の節目を迎える。例えば、道路や橋梁の約6割、トンネルの約4割が建設から50年以上を経過し、補修や更新が不可避となる。上下水道も例外ではない。まさに、持続可能な社会基盤の維持に向けて、計画的な再生が急務となっている。
こうした中で発生したのが埼玉県八潮市の下水道管破損による道路陥没事故である。もはや「第二の八潮事故」が再び起こらないと断言できない現実は、社会全体が直視しなければならない待ったなしの課題だ。
しかも、地下に暗渠化された下水道は道路や橋梁と異なり、近接目視点検を徹底することができない。加えて、自治体の財政事情悪化で、予算制約が一層強まることや現場を担うベテラン技術者の減少などの課題にも直面することが不可避だ。
適切な点検、補修・修繕を行っていれば、50年が経過するからといって直ちにアメリカのような事態が頻発するわけではない。ただ、「荒廃するアメリカ」ならぬ「荒廃する日本」はなんとしても防がねばならない。そのためにも、道路や橋梁、上下水道など、あらゆるインフラの劣化予測と老朽化対策を計画的に進めることが重要である。
私は、2001年に民間コンサルタントに入社後、道路や鉄道橋梁などの目視点検や劣化予測などを中心に行ってきた。したがって、下水道の専門家ではないが、インフラの劣化予測や老朽化対策には分野が異なっていても「通底」するものがある。その鍵を握るのが膨大な「点検データ」をどう活用するかだ。
