2025年12月12日(金)

Wedge REPORT

2025年11月21日

 林道事業の中に、林業地域総合整備事業(林総)というのがあった。市町村やその中の過疎地域等を対象にしたいわゆる地区物事業で、林業従事者の暮らす山村集落の生活環境施設を整備して、集落の維持・確保を意図したのである。 

山村集落(筆者撮影)

 いささか林道事業の本旨から外れるような気もするのだが、予算額の確保に血道をあげる中央各省庁の性で、毎年新規事業を打ち出し続けないと大蔵省(現・財務省)に予算額を減らされるという強迫観念に駆られ、徐々に対象メニューが拡大していった結果であろう。もっとも政権与党の応援もあった結果でもあり、山村維持のためには必須の措置であったことは間違いない。山村の生活改善に役立っていた林道のバリエーションとして、生活環境施設の整備が位置付けられたことも納得いただけよう。

 具体的メニューとしては、林道のほか、簡易水道、排水施設、集落広場、集落林道(山村集落内の道)、簡易な下水道などがあった。山村住民に1番喜ばれたのが簡易水道で、それまで各戸で谷水などを引き込んで生活用水を確保していたのが、水道になったことでメンテナンスが非常に楽になった。

山村集落の水源となる渓流

 それまでは雨が続くと濁り水になったりしたのが、いつでも清水(せいすい)だし、面倒だった水源の清掃や補修なども共同や市町村管理になった。常に水圧が一定になって、ガス湯沸かし器が取り付けられて、主婦の好評を博した。

 集落内の各所に消火栓が設けられたことにより、消防団に女性が参加しやすくなって、昼間の火事を女性だけで消火した事例も聞いた。そもそも沢水等にはクマ、シカ、イノシシなどの野生動物の屎尿(しにょう)が混じっているらしく、保健所で水質検査をしてもらうと、たいがい引用不適となる。簡易水道は衛生面での改善も果たしたのである。


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