2026年6月8日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月8日

 世界経済の中心に位置するようなビジネスは、こうした脆弱性に対する備えを取り始めている。Apple社は中国依存からの脱皮を図り、米国で使用されるiPhoneの半数をインドで生産する計画である。

 国家が強靭性の維持を行動原則とする中、企業が成功するためには、カナダやシンガポールのような国のアプローチをモデルとすることである。それは、自給の度合いを高め、他者が梃を効かそうとするのに対して立場を強め、自らも不均衡による優位を生み出すことである。

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新たな3つの側面

 この論説の著者ナダー・ムサヴィザデは、かつて国連事務局で勤務し、現在は、地政学リスク等のコンサルタントとして活動している。コフィ・アナン国連事務総長時代の1997~2003年に国連事務総長特別補佐官を務めた。イラン系デンマーク人である。

 この論説では、例をあげ、規模が大きく経済レベルが高い大国が、依存関係を梃に、それよりも小さく貧しい国に翻弄されることを、「非対称の時代」と呼ぶ。が、そうした「小よく大を制す」という現象は、歴史的に前例がないわけではない。

 70年代の二回の石油危機は、産油国が石油という産品を経済分野で「武器化」し、先進国を含め世界中がその影響をこうむった事例である。ベトナム戦争(米国と北ベトナム)やアフガン戦争(ソ連とアフガニスタン)は、地勢や人心などの現地情勢、本国からの距離等の要因もあり、大国が容易に小国を屈服させることができなかった事例である。そうした中、ムサヴィザデが今の時代を「非対称の時代」と呼ぶのは、どのような点に新規性があるのだろうか。

 第一は、技術の進歩によって、相対的に小さく貧しい国でも、規模が大きく経済レベルが高い大国に「混乱をもたらす」ことが可能になっている。安価なドローンが紛争のあり方を大きく変えているのがその良い例であろう。ムサヴィザデが「作戦のレベル」で述べている点はこれに当たる。


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