民の力が強く、自由である──。これこそが「大阪らしさ」であり、首都ではない日本の第二都市の「証し」であり、「強み」なのであろう。さらに、阪大の源流を遡れば、江戸時代に大坂町人たちの出資によって開設された「懐徳堂」や緒方洪庵が開いた蘭学塾の「適塾」であり、これもまさしく民の力だと言える(WedgeONLINE25年4月19日「大坂商人哲学と阪大の源流 現代に甦る「懐徳堂」とは?」)参照)。
「大阪人は世界中どこへ行っても大阪弁を話しますし、おせっかい。英語が話せないおばちゃんでも、外国人に道を聞かれたら、『どないしたん?』と言って案内する姿をよく見ます。食事もおいしく、コスパは最強。私の知り合いの外国人の多くは『居心地がいい』と気に入ってくれます」
「イノベーションは、ごちゃまぜから生まれる」
さらに吉森さんはこうも言う。
「長寿番組の『探偵!ナイトスクープ』に出演する素人を見てください。あんなに面白い人たちがいますか? 関西電気保安協会の『ある日突然関西人になってしまった男の物語』というCMも話題になりましたが、大阪の魅力は、くだらないことから高尚なことまで、〝なんでもあり〟が最大の魅力なのではないでしょうか」
このことは、研究の世界にも通じる。
「イノベーションは、ごちゃまぜから生まれるものです。『役に立ちそうな研究だけにお金を出す』ということをやりすぎると、大発見を見逃すこともあります。
だから、私の座右の銘は『見る前に飛べ』です。決断する前にいろいろと調べすぎると、かえって飛べなくなりますから」
取材後、吉森さんの名刺の整理をしていたら、裏にはこう書かれてあった。
「死ぬ瞬間まで、研究者」
やはり吉森さんらしい。そう思った。
