2025年1月4日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年1月2日

 2025年、トランプ新大統領就任後のアメリカ経済を占うのは難しい。政権発足を取り巻く環境も、また選挙戦を通じて掲げてきた公約も、どちらも同じくトランプ政権であった17年からの第一次政権時代とは全く異なるからだ。

米国経済はトランプ大統領の就任でより見通しにくくなっている(Ultima_Gaina/gettyimages)

 まず、16年11月に大統領に当選した際には顕著な株高現象が起き、トランプ株高とかトランプ景気と言われた。ただ、この際にはトランプ氏は別に何か効果的な政策を実行したわけではない。08年のリーマン・ショックに続いて、翌年09年に深刻な株安、金融危機を経験したオバマ政権が、丸々8年かけて景気をゆっくりと回復させた「成功の果実」が自動的に転がり込んできただけだ。

 その後は、景気が基本的には一進一退しているうちに、コロナ禍という特殊な経済状況に突っ込んでいる。この時期はまさに特殊な経済の時期であった。というのは、テレワークで回るテック、金融、開発系の経済は引き続き好況であった一方で、パンデミックによって構造不況に陥ったサービスや運輸関係などの産業には、トランプ政権も、これを受け継いだバイデン政権も幅広く公的資金を支援したからだ。

 では、今回の状況はどうかと言うと、状況は16年から17年とも、そしてコロナ禍の最中とも全く異なっている。まずコロナ禍への対策として猛烈な勢いで行われたバラマキの結果、市中にはいまでもカネが余っている。このカネ余りのために、アメリカはインフレに苦しんでおり、それがトランプ当選の最大の理由ではある。けれども、反対にあらゆるモノとサービスの価格が高止まりしていても消費は弱さを見せていない、そのぐらいアメリカの購買力は底堅い。

 ただ、景気が好調であるということは、どこかで必ず後退が始まるということである。その意味では、既にここ数年は、その景気後退を警戒すべきタイミングを図りつつの経済運営が続いている。それでも景気は大崩れしていないが、反対にいつ崩れてもおかしくない。これは第一次政権のスタート時とは根本的に状況が異なっている。

 そうは言っても、実際は今回もトランプ当選を受けて株は上昇した。これは、トランプ政権であれば、経済活動にフレンドリーな政策が実行されるという期待、さらには投資家として大きな関心事であるキャピタルゲイン課税が緩和されるという期待感が支えている。

 しかし、こうした「ご祝儀相場」も昨年12月末で一段落したと考えられる。アメリカの証券業界は12月決算が多く、ディーラー達の賞与も12月時点でのYTD(年間利回り)の成果で決定される。ということは、年を越した1月からは全く新しい相場が始まるわけだし、何よりも1月20日には新政権がスタートするからだ。

 そこから実質的にアメリカ経済は25年度に突入する。その行く末を占うには、様々な観点があると思うが、最低でも次の5点は押さえておきたい。


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