行政改革で議会と〝対決〟
5点目は、米国の連邦政府の行政改革である。トランプ氏は、イーロン・マスク氏に加えて、同じくテック系の企業家であるビベック・ラマスワミ氏(元大統領候補)を「政府効率化省(DOGE)」のトップに任命。徹底的に中央政府の簡素化に進むとしている。
DX化の徹底と、規制緩和により政府のコストをカットして財政を一気に再建させるというのだが、これは当然のことながら連邦議会との真っ向からの対決となる。この点に関しては、昨年の年内に既に「前哨戦」が見られた。暫定予算の扱いに関して「25年以降の大リストラの予告として政府閉鎖に追い込んでやる」と息巻くイーロン・マスク氏に対して、共和党のジョンソン下院議長は手際よく動いて「政府閉鎖」を回避したのである。
このエピソードは、トランプ氏側が「押す時は押すが、引く時は引く」という勝負の駆け引きをしたに過ぎないとも思える。だが、見方を変えれば「過激な政策は簡単には認めない」という共和党も含めた議会側の宣戦布告とも取れる。
共和党は大統領に加えて上下両院の過半数を取っているが、上院議員は個人が一国一城の主であり、多くの場合は中道票に支えられて通ってきており、トランプ氏の姿勢には是々非々で臨む議員が多い。下院に至っては僅差の伯仲議会となっているので、トランプ氏としては1月以降の新議会も難敵となるであろう。
そこで「DOGE」構想が行き詰まるようなら、トランプ氏はあっさりとマスク氏に責任を被せて、同氏を切り捨てるという展開もあるかもしれない。この問題でモメていては26年11月の中間選挙が戦えないので、遅くとも26年初頭までにこの問題の「勝敗」をつける必要がある。となれば、マスク氏としては短期決戦で突破を図ろうとするであろう。
24年11月の大統領選では「経済」が事実上の争点であったし、それゆえにトランプ氏は勝利したことは疑い得ない。そして、トランプ氏の政策のほとんどがアメリカ経済を左右するインパクトを持っているのは事実だ。
そのアメリカ経済は既に1月2日から始動している。そのスピード感に留意して見ていくことが何よりも重要である。