この事業にも課題がないわけではない。設備供給と工事を進める人材だ。米国では発電関連設備が不足し始め、納期が延び始めている。関連設備を供給する企業の株価が大きく上昇した。
たとえば、今年GEから分社化されたタービンを製造するGEベルノバの株価は、4月1日の142.02ドルから12月17日に328.34ドルまで上昇している。
日本は安全保障上必要とされる発電設備を新設できるのだろうか。設備と人の問題に加え、支援制度の問題もありそうだ。
第7次エネルギー基本計画を実現可能か
12月17日に経済産業省は、第7次エネルギー基本計画の素案を発表した。日本の電力需要は、2000年頃まで成長していたが、その後伸びが止まり10年頃からは減少期に入った(図-3)。
第6次エネルギー基本計画では、この電力需要減少を反映し、30年度の電力需要の減少が想定されていたが、データーセンター、半導体工場新設、電化の進展を反映し、第7次エネルギー基本計画では40年度の発電量は、23年度の9854億kWhから1.1兆から1.2兆kWhに増加するとされた。
40年度の電源の内訳は、原子力20%、火力30%から40%、再生可能エネルギー(再エネ)40%から50%だ。23年度9.8%の太陽光発電が22%から29%に、1.1%の風力が4%から8%に大きく増える想定だ(図-4)。
再エネについては、電気料金上昇と引き換えに固定価格買取などの制度により導入を進めることは可能だろう。一方、安定的な電力供給に必要な原子力の目標を達成し、維持するためには設備の建て替え、新設も視野に入れる必要がある。
自由化された市場では将来の電気料金について予見性が失われ巨額な設備投資は実行されない。投資を支援する制度の創出は待ったなしだ。
設備新設を支援する制度がなければ、建設は進まず、設備も人材も日本から失われ、やがて国の安全保障も脅かされる。数値目標を掲げるだけでは意味はない。実現への道筋を示す必要がある。