電子レンジは、電磁波を食材に当て、食材中の水分子を振動させることにより熱エネルギーに変え、食材を温める調理家電だ。調理家電ではあるが、主な仕事は「温め」。
日本人の主食と呼ばれる「ご飯」は、まず温かくないと美味しくない。「炊き立て」という言葉=美味しいと直感的に思ってしまうのは日本人の習慣だ。
端的な例は、コンビニ弁当。耐熱弁当容器が採用されたのが1988年。バブル元年。87年の電子レンジの世帯普及率がちょうど50%。10年後は90%に達する。以降、調理家電のトップに躍り出る。今年、タイガー魔法瓶が一人暮らしの経験者が選ぶ「揃えてよかったキッチン家電」の調査結果を発表したが、電子レンジが堂々の第1位、以降、電気ケトル、炊飯器と続く。
逆に言えば、外で料理を買ってきて、家で食べるいわゆる「中食(なかしょく)」は最近多くなってきている。正直、電子レンジで温めればいいだけの冷凍・冷蔵食品は、今や多種多様。なんでもある。コンビニは元々中食型だが、確かに、ここまで揃うと、コンビニに売っているものだけで、生活するのも問題なさそうと思ってしまう。
電子レンジはスイッチ一つで、温め可能なので、予定が狂った時、母親が子どもに「冷蔵庫の上から××番目の棚に、○○が入っているのでチンして食べてね」と、電話することもできる。
だが、このスィッチ1つというのは、冷蔵品の温めだ。冷凍食品ではかなりの確立で、うまく行かない。そのため冷凍食品メーカーは、1つ1つ、××W、〇分○秒と解凍条件を記載する。それでもうまく解凍できないことが多々ある。このため「冷たい場合は、軽くラップして、10秒ずつ再加熱してください」という注意文言が必ず付く。
それに対し、冷凍食品のワンタッチ解凍に挑んだメーカーがある。アクアだ。モデルは「四ツ星レンジ」。(型番:AQM-KF20P)
初めは半信半疑で、テストを始めたが、半端なできでなかった。レポートしたい。
電子レンジのキーデバイス「センサー」
電子レンジは、オーブンレンジと単機能レンジに分類される。オーブンレンジはオーブン機能とレンジ機能が一つにまとめられた家電だが、筐体サイズが同じ。また、単機能レンジだけだと、料理できないので、むりやり合体させた感じが強い。が、ともかくレンジ機能としては、単機能レンジとなんら変わらない。
単機能レンジは大きく2種類に分類される。ターンテーブルありとなしだ。電子レンジが使用する電磁波は、2.4GHzギガヘルツのマイクロ波。マイクロ波の性質の一つは直進性が強いこと。
ターンテーブルありのモデルは、電磁波を固定し、ターンテーブルをぐるぐる回すことにより、ムラを抑えるタイプだ。なし(フルフラットとも呼ぶ)は、電磁波がいろいろな方向へ飛ぶように、電磁波を出すアンテナが回転する。アンテナを回すよりターンテーブルを回す方が構造が簡単。このため、ターンテーブルを用いたモデルの方が安価となる。当然、食材などがひっかかり、ターンテーブルが回らないと、解凍失敗になる。
お察しの通り、電子レンジの歴史は、今回のテーマのように「いかに精度良く解凍させるか」であるが、もう1つは「いかに安く作るか」だ。持ってわかるように、電子レンジは重い。これは材料費だけでも、他の家電より高いことを意味する。電磁波発生装置であるマグネトロンが重い上、筐体は、安全、健康被害を防ぐため、電子波が漏れ出さないよう、いろいろな工夫がされているためだ。
しかし皆んなに使ってもらえるようにするには、コストダウンしなければならない。
コストダウンの一つに「湿度センサー」の採用がある。「温度センサー」は高いので、食材から出てくる蒸気の量で出来上がりを計るのだ。中には、蒸気の分軽くなるということで、重量センサーで出来上がりを計るモデルもあると聞く。「温度センサー」で温度で管理すると、そのものズバリなのでより温度精度は上がる。解凍・温め精度アップには、ぜひ欲しい。
アクアはハイアール・グループの傘下。ハイアールは白物家電で世界NO.1の会社だが、それは中〜低価格帯の家電が強いからだ。パーツの共有化により量産効果を最大限に活かしている。
アクアは日本の会社。グループ内で新しい価値観に加え、新しい技術を作ることが求められている。今回の四ツ星レンジを開発にするに当たり、「温度センサー」を採用した。これが四ツ星レンジの温度を管理する。
センサーの位置はドアを開けたてすぐのところの右壁の上。庫内全体を俯瞰できる位置だ。
「オート」で目指すのは、何度か?
電子レンジは、料理をどこまで温めればいいのかというと、50〜60℃。加えて言うと、人間の舌は、70℃を越すと急速に味が分からなくなる。というより、70℃以上では、口内といえども火傷する。
だが、料理は1つだけではない。冷たい料理もある。こちらは5〜12℃。ほぼ日本酒の冷の温度に等しい。