IoT(Internet of Things)。モノのインターネット。全てのモノをネットに繋げると世界が変わる、そう言われて、すでに10年近く経つ。日本でも色々な家電がネット接続できるようになった。エアコンにも、冷蔵庫にも、電子レンジにも、炊飯器もネット接続できる。だが、われわれの生活は豊かになったかというと、あまりそうとは思えない。どうしてかというとIoTの機能の一つ「連動」を使いこなしてないからだ。
「連動」というのは、あるデータの下に、2種類以上の家電を効果的に稼働させること、もしくは異なる2種類以上の家電を連続して効果的に稼働させることをいう。
室内干しを効率よく行うために、エアコンと扇風機を同時に効果的に使うような感じだ。エアコンは除湿、扇風機は送風という機能を持つが、できる限り短時間で乾燥させ、電気代もなるべく安くとなると難題。エアコンが持つセンサー、もしくは別に用意した独立した空気センサーのデータをネットコンピューターで分析、最大効率で、エアコン、扇風機を調整して使うこと、これが「連動」だ。
基本、家電は一機能が得意となるように組み立てられている。優れたAIを持つロボットでもない限り、執事、メイドのような、「一人連動」ともいうべき、マルチな働きは家電にはできない。それを今ある家電でできるようにするのがIoTの「連動」なのだ。
あるネット調査で、ユーザーに「IoTを何に使いたいか?」という問いに対して、一番多かった回答は「セキュリティー」だった。確かに、ふと気になった時、外出先からでも、家の状態がどうなっているのかがわかると色々便利だ。
セキュリティーデバイスは、「鍵(スマートキー)」から始まり、「監視カメラ」に至るまで色々な種類、色々なレベルのものが存在する。その中の1つが、「スマートインターフォン」だ。インターフォンは玄関の状態を家の中でも把握できるシステム。訪問客を確認するのに使われる。古くは音声だけだったが、今では映像付きが主流だ。
マンションの場合、構成は「集合玄関機」、「玄関子機」と「室内モニター」の3つのデバイスより成る。多くの場合は有線。建築時に埋め込みで設置されることが多い。このインターフォンにスマートフォン(以下、スマホ)を連動させたのが、スマートインターフォンだ。スマホアプリは、室内モニターと同じ機能を持つので、外出先から訪問客応対することも可能だ。
各住戸の玄関前では人感センサーで、玄関に人が近づいたら知らせてもらうこともできるし、暗視モードもあるので、夜、玄関で変な物音がしても家の中や遠隔地からでも確認することができる。スマホは、ほぼ常時携帯している。IoTの連携で、便利度がより上がる。
便利とセキュリティーの両立
ドアコムの「スマートインターフォン」
今回取材した、DOORCOM(以下、ドアコム)の製品。製品は、デザインも含めて実にスマートだった。
今年4月1日に運送業界の残業時間を年間960時間とすることによる「物流の2024年問題」やCO2の排出問題などに関連して「荷物の再配達」が課題になるなか、一つの解決手段として最近クローズアップされているのが置き配だ。
日本郵政、ヤマト運輸に続き今年9月から佐川急便も置き配を開始するが、置かれた荷物に対するセキュリティーがしっかりしていることが条件となる。
最近は大きな荷物も増えたが、宅配便の一般サイズは、3辺の合計が200センチ以内、重さ30キロまで。クール便以外で、このサイズの宅配便を入れられるようにできているのがマンションなど、集合住宅に設置される宅配ボックスだ。特殊サイズに対応しているメーカーもあるが、一般サイズ用のボックスが多数並ぶのが一般的。
問題はここからだ。アナログ・セキュリティーだと、宅配業者は各ボックスの鍵番号を任意に選んでロックしその番号を配達先に連絡する。
ただし、「物流の2024年問題」でより時間余裕がなくなり、配達先へ電話する余裕もあまりないそうだ。しかも電話は必ずしも繋がるわけでもない。確実とはいえないが、メールが一番便利だ。しかし、最近は宅配業者を名乗る偽メールも多く、必ずしも読まれるとは限らない。
加えて宅配ボックスを悪用する宅配業者もいる。空いている宅配ボックスの鍵をロックし、自分や自社の配達員間でその番号を共有する。そして自社の配達時にそのボックスを使う。要するに常に自社ためにボックスをキープし他社が利用できなくするわけだ。
これにより空ボックスの数が減ることになり、他社が再配達をせざるを得ない可能性が高くなる。当然、ユーザーは、面倒な再配達依頼をしなければならなくなる。
ドアコムは、元々IPインターフォンが主力商品。IPインターフォンは、インターネット接続に対応したもので、従来のインターフォンと比べ利便性が高く、多くの機能が使える。ドアコムのIPインターフォンは顔認証やQRコードでの認証、スマホアプリで来訪者の確認や応答することが可能だ。インターネットに接続することで、前述の通りどこにいても来客への応答やオートロックの解除、利用履歴の閲覧もすることができる。またトラブル時もオンラインの遠隔操作で対応することが可能だ。
ドアコムではこのIPインターフォンとスマホとのシームレスな連携を実現した宅配ボックスを開発した。
ドアコムの宅配ボックスは、配達者が空ボックスを見つけ、荷物を入れる。するとボックス内の赤外線センサーがこれを感知、ロックをかける。配達者は配達先の部屋番号をコンソールに入力。システムは、その部屋の住人に連絡する。
これに加えてマンションの管理人も、どの部屋の人が置き配しているのかが、分かるようになる。荷物を取り出さない場合は、24時間おきに受取人に連絡することで荷物の取り忘れを防げる。またドアコムの宅配ボックスは内部にセンサーがあり空のままだとロックができないシステムになっており、配達業者による空ボックスのキープもできない。これらの結果ボックスの稼働率が上がっていると言う。今後は、宅配ボックスを開ける時に顔認証の採用も予定している。
システムをネットに繋げると、住人、管理人、宅配業者それぞれにメリットがある。これが繋ぎ、「連携」する力だ。これを実現するのがIoTであり、誰もがメリットを享受できる。
しかし、IoTの利便性を享受することができるのは、ドアコムのように、インターフォンから宅配ボックスまで自社で製造しているからだ。IoTの考え方から言うと、異なるメーカーでもつながってほしいが、実際はそうはなっていない。