2024年10月2日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月2日

 2024年9月10日付フィナンシャル・タイムズ紙は、「米中のインド太平洋地域の軍司令官が、初の電話連絡を実施」との記事を掲げ、昨年11月のサンフランシスコ米中首脳会談で合意された米中地域司令官の電話会談が今週初めて行われたことの背景を、今後の米中間の関与の動きの可能性も含めて解説している。

バイデン大統領(右)と習近平国家主席の合意により、地域司令官の電話会談が行われた(AP/アフロ)

 バイデン大統領と習近平主席の昨年の合意に従い、米インド太平洋軍司令官パパロ提督は呉亜男人民解放軍南部戦区司令官と9月10日に初のビデオ会議をした。両者は、共通の懸念事項につき詳細な意見交換をしたと中国側は述べた。

 米インド太平洋軍は、この会談を「建設的で賞賛に値するもの」と述べたが、パパロ提督が人民解放軍に対し南シナ海その他で危険かつ威嚇的で緊張激化に繋がりうる戦術を取ることを再検討するよう求めたとも述べた。

 この会談は米中の軍間の新たな関与の兆しを示す最新の動きだ。バイデンと習近平は昨年11月にサンフランシスコで、米中関係を安定させ両大国の競争が紛争に結びつかないようにするためのより大きな努力の一環として、両軍の連絡チャネル再開に合意した。

 中国は2022年にペロシ下院議長が米下院議長としては25年ぶりに台湾を訪問したことに抗議し、両軍間の連絡チャネルを閉鎖した。本年両軍は、5月のシャングリラダイアローグの際のオースティン国防長官と董軍・中国国防大臣の会談を含め多くの関与を実施してきたが、パパロとウーの電話会談はこの2人の司令官の初めての対話であり、特に重要だ。

 米国防省は、ここ数カ月間のフィリピンに対する敵対行為を含め、最近中国が南シナ海での敵対行為を先鋭化させたこともあり、長きにわたり両司令官の電話連絡実施を働きかけてきた。昨年初以来中国は、係争海域においてフィリピン軍その他に対する敵対行為で暴力の度合いを高めてきた。

 衝突は海警が実行する場合でも、人民解放軍船舶は通常その近辺に居る。最も深刻な事件では、中国の海警船舶がセカンド・トーマス礁の近くで、フィリピン船に体当りし引きずり回し穴を開けた。

 マルコス大統領は、フィリピン国民が死亡すれば、戦争行為に近いものと見なすと5月に警告した。米国は、南シナ海と沿岸警備隊船舶は米比相互防衛条約の対象だと公言した。


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