2024年12月21日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年9月23日

 南シナ海における中国のフィリピンに対する妨害活動について、リチャード・ヘデリアンが、2024年9月9日付のローウィ―研究所のサイトで、フィリピンの「透明性イニシアティブ」は大きな成功を収めているが、パートナー諸国は支援を強化する必要があると論じている。

中国はフィリピン沿岸警備隊の船に嫌がらせを続けている(MDV Edwards/gettyimages)

 中国海警はセカンド・トーマス礁の近辺でフィリピンの海軍艦艇に嫌がらせをやってきたが、今度はサビナ礁の近くでフィリピンの巡視船の間に割り込もうとしている。中国海警の巡視船はフィリピン沿岸警備隊の巡視船に何度も体当たりした。

 争いとなっている海域における優越性を示そうと、中国は南沙諸島に最大規模の艦隊を停泊させている。1カ月前には、人民解放軍の空軍がスカボロー礁の上空でフィリピンの哨戒機を威圧したこともある。スカボロー礁はフィリピンの 排他的経済水域(EEZ)内に位置するが、2012 年に睨み合いの末、中国の実効支配に帰した。

 中国の不法で過剰な力の行使を繰り返しあぶり出したフィリピンの「透明性イニシアティブ」は相当大きな成功を収めている。最も顕著なのは、セカンド・トーマス礁の事実上の海軍基地として意図的に座礁させた揚陸艦 Sierra Madraを要塞化したことである。サビナ礁の近辺における中国の最近の行動はフィリピンによる再度の軍事要塞化の成功に対する恐怖から生まれたもののように思われる。

 けれども、フィリピンも大きなコストを支払っている。中国の蝟集戦術と「ミッション・キル」戦術によってフィリピン兵が負傷したこともある。

 従って、鍵となる同盟国、特に米国と日本は、巡視船、高速艇、退役した軍艦を含め、実際的で効果的な支援を迅速に提供する緊急の必要がある。さらに、中国の「グレーゾーン」戦術に対する抑止の失敗が際立つ米比相互防衛条約を見直すべき時である。


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