2024年9月8日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年9月8日

(2024.3.13~5.1 50日間 総費用23万8千円〈航空券含む〉)

巨大ショッピング・モール、ロビンソンズとSM

 フィリピンではどこの町に行っても途上国にしては“分不相応”なショッピング・モールがある。全国展開しているロビンソンズとSMが数多あるショッピング・モールのなかで双璧を成している。その町の主要バスターミナルはロビンソンズやSMのショッピング・モールに隣接していることが多い。また町のランドマークになっており町角で道を聞くと「ロビンソンズから1キロ南の方向」「SMを目指して10分歩いて右側」とか教えてくれる。

 バギオはルソン島の高原都市で避暑地として人気がある。ホステルで町全体を眺望できる展望台を尋ねたら「SMショッピング・モールが近くて便利」とのこと。高台に巨大な建物が聳えている。人気スポットらしく広い展望デッキはお祭り騒ぎのように込み合っている。観光客・買い物客はほぼ全てフィリピン人であり外国人はポツンポツンくらいしか見当たらない。

バギオのSMショッピングモールのマクドナルドではランチの混雑時には店の外にもテーブルを設けて対応していた

 冷房のキンキンに効いた館内で最初に目に付いたのはマクドナルドの順番待ちの長蛇の行列。マクドナルドはじめフィリピンの全国チェーンのファーストフードは概して値段が日本とあまり変わらない。円安のため例えばビッグマックセットで800円くらい。逆にフィリピンの平均収入は日本の8~9分の1程度。国内の賃金水準が低いために国民の10人に1人は外国へ出稼ぎしているほどだ。

 それなのに家族連れがマクドナルドに群れを成して行列していることに違和感を抱いた。SMの各階の売場も大変な賑わいだった。食品売り場を覗いても日本と比較してさほど安くない。そしてバギオのSMは決して特別ではなくフィリピン各地のショッピング・モールや外食チェーンは同様にフィリピン人で賑わっている。

フィリピンの経済産業構造は既に先進国?

イロイロ市のロビンソンズ・ショッピングモール。平日午前10時というの に巨大モール内は買い物客で混雑している。熱帯のフィリピンでは買物・ランチ・シネ マと冷房の効いたショッピングモールで1日過ごすのが庶民の楽しみだ

 気になってフィリピンの国内総生産(GDP)を調べると農林水産業10%、鉱工業30%、サービス産業60%。他方で支出面の内訳は個人消費70%、投資12%、政府支出11%である。

 ちなみに日本のGDPは農林水産業1%、鉱工業30%弱、サービス産業70%。支出は個人消費50%、投資20%、政府支出21%となっている。

 数字で見るとフィリピンは個人消費比率が高く産業構造もサービス産業が断トツに大きい。近年のフィリピンの経済成長を牽引しているのは出稼ぎの外貨送金とサービス産業であり、それに支えられた旺盛な個人消費という背景があるようだ。

新車が多いフィリピンの自家用乗用車、カローラは高級車?

トヨタ販売店の商談コーナー。この左側に新モデル展示コーナーがある。

 旺盛な個人消費を実感したのはフィリピンの自動車市場。フィリピンの街を歩いて最初に気づいたのは新しい日本メーカーの車が多いことである。バンやトラックなどの商用車では日本製や韓国製の輸入中古車も走っているが乗用車では輸入中古車はほとんど見かけなかった。

 パキスタン、タンザニア、モンゴル、スリランカなどでは日本の車検証がフロントガラスに貼られたままの輸入中古車が商用車・乗用車ともに大勢を占めているがフィリピンは全く違う。
フィリピンの2022年の1人当たりGDPは3623ドル。自動車業界の経験則によると途上国において1人当たりGDPが3000ドルを超えると自家用車の一般家庭への普及が始まるという。フィリピン経済は一般家庭が新車を購入できるステージに入ったのだ。

日本の自動車メーカーの牙城、マニラのカーディーラー街

 2022年7月。マニラ市のOTIS地区にカーディーラーが軒を並べている一角があった。最初に店構えがひときわ大きいトヨタのディーラーを覗いてみた。日本の販売店と同様に店内に入るとコーヒーや冷たい飲み物を勧められた。接客スタイルも日本式なのだ。

 マネージャー氏によると売れ筋はビオスであり自家用車を始めて購入する客が多い。カローラはショールームでも目立つ場所に置いてありカローラ・クロス、カローラ・アルティスなどが人気らしい。フィリピンではカローラはラグジュアリー・カーという位置づけらしい。

 このディーラー街には三菱、日産、ホンダ、スズキなど日本メーカーの他にフォード、GM,プジョーと欧米メーカーも店を構えていた。ちなみにフィリピンの新車乗用車市場ではトヨタが半分近いシェアを占め日本メーカー各社が後を追っており断然に日本車市場だ。

中国メーカーの台頭はあり得るのか

 三菱とホンダのディーラーの間に新規開店した中国の“吉利汽車”(Geely)があった。店内は雑然としており、接客スタイルは中国式であり、フィリピン人マネージャーは立ち話で筆者に説明。マネージャーは吉利汽車が価格と品質で優位性があると強調した。全て中国からの輸入車で2021年度は3000台を販売。ガソリン車とハイブリッド車のみでありEVはフィリピンでは時期尚早と判断していると。

 ちなみに2023年のフィリピンの自動車新車販売は43万台で2021年の24万台から急増している。43万台の内訳は乗用車が11万台、商用車が32万台。商用車ではピックアップとスポーツユーティリティーが25万台を占める。トヨタが全体の半分近い20万台でトップであり日本勢の牙城は揺るがない。


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