国産メーカーが大健闘しているフィリピン家電市場
フィリピンではショッピング・モールに広い家電売場がある。中国のハイセンス、ハイアール、TCL、韓国のサムソン、LGなども進出しているが余り存在感がない。ましてや日本ブランドの家電はほとんど見られなかった。
フィリピンの家電売場で売場面積の大半を占めているのは地元メーカーである。XTremeは華僑財閥傘下の総合家電大手である。Dowellは1998年創業の総合家電。Camelは扇風機からスタートした創業30年の総合家電。ToughMamaはキッチン家電の大手だ。
日本メーカーを連想させる怪しいブランド
海外メーカーで比較的に健闘していたのは中国美的集団のMediaである。台湾桜花のSAKURA、マレーシアのPENSONICもあった。SAKURAやPENSONICというブランド名は高品質の日本製家電をイメージさせるためであろうか。さすがにPENSONICはパナソニックから各国で訴訟を起こされたがフィリピンでは使用を認められた。
Asahiは1982年創業のれっきとしたフィリピン家電メーカー。扇風機製造から事業を拡大、キッチン用の小型家電がメイン。FujiDenzoも紛らわしい。冷凍庫や冷蔵庫のブランドでフィリピンの食堂で頻繁に見かける。筆者は富士電機と電装の合弁会社かと想像したがフィリピンのメーカーであった。
フィリピンのサービス産業、リゾートで垣間見たコールセンター業務
フィリピンの国民総所得の10%を占める海外出稼ぎについては『出稼ぎ大国フィリピンにおける政治思想とは?』を、フィリピンの英会話学校ビジネスについては『フィリピンの英会話学校は外貨を稼ぐ有望産業』を参照されたい。
2024年4月。パラワン諸島のリゾート都市プエルト・プリンセサのホステルに長逗留。吹き抜けのラウンジのテーブルにパソコンを置いて作業をしている女子がいた。早朝から作業しているようだが途中で交替して深夜まで作業している。忙しいのだろうかカップヌードルやスナックでランチや夕食をしている。
2人は英国に本社を置く不動産会社のクレーム対応窓口業務をしていたのだ。不動産会社は英国、米国、オーストラリアに151のアパート・マンションを所有。例えばドアが開かない、エアコンが壊れた、水道が出ない等のトラブルに24時間対応する窓口業務。メールで受け取ったクレームに即座にメールで回答する。トラブルのテクニカルな解決は物件毎に契約している業者に対応を指示して結果を確認するらしい。
早朝から午前中は主にカリフォルニアの案件、昼間はオーストラリアの案件、夕刻からは英国の案件が多いという。2人で交替しながら対応している。ホステルのマネージャー氏によるとコールセンター業務は英語力など採用条件が厳しくパフォーマンスを査定されるのでハードな仕事だが、逆に給与水準が高く人気職種らしい。
上記2人組とは別のフィリピン女子もしばしばパソコン作業をしていた。彼女はオーストラリアの広告会社からグラフィック・デザインの一部の作業を請け負っていた。偶にパソコン電話で打ち合わせをしていたが時間に縛られないのがメリットらしい。
デルモンテの工場従業員は12時間交代勤務
ミンダナオ島のカガヤン・デ・オロは人口69万人の港湾都市。市街地から30分ほどバスに乗るとデルモンテの巨大工場がある。朝夕の出退勤時間帯には歩道は従業員の男女の若者の群れで一杯になる。
米国の巨大食品企業のデルモンテは1920年にフィリピンに進出してパイナップル缶詰の輸出を開始。カガヤン・デ・オロの工場がいつ操業開始したのか誰に聞いても判然としないが、50代のホステルのマネージャーの母親も工場で働いていたというので戦前からの歴史があるのかも知れない。
従業員は約2000人で工場は12時間勤務の二交替制。工場裏の海岸の専用埠頭から缶詰・瓶詰が主に米国・日本に輸出されている。
工場の対面には食堂、コンビニ、雑貨屋など出退勤する従業員相手の店が並んでいる。夕方退勤した若者が三々五々とグループで店に入る。ビールやラム酒などを売るコンビニや雑貨屋の店先にはテーブル・椅子が置いてあり若者たちで忽ち占拠される。
サンミゲル、レッドホースなどのビールは1リットル瓶で350円前後であり決して安くないが近くの屋台で仕入れた焼き鳥を肴に賑やかに飲み食いしている。隣の3人組は既に大瓶4本を空けているが追加でさらに2本買ってきた。他のグループも盛大に飲んでいる。
今晩の1人当たりの飲食費は1000円を超えるだろう。フィリピンの平均月収4~5万円からすると消費性向がメチャ高い。個人消費がGDPの70%を占めるというのも頷けた。
以上 次回に続く