2024年7月7日(日)

World Energy Watch

2024年7月5日

 ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく2年半になるが、ロシア軍の戦死者は英国BBCが確実に確認しただけでも5万人超、実際には30万人を超えているとする報道もある。これだけ莫大な数の戦死者を出していまなお、新兵を前線に送り続けることが出来るのは独裁国家ならではで、戦慄を禁じ得ない。対峙するウクライナ軍はたまったものではないだろう。

 そうなると期待を寄せたくなるのは経済制裁の効果であるが、ロシア経済は意外と悪くない状態を維持している。侵攻開始した2022年も国内総生産(GDP)成長率はマイナス1.2%のわずかな落ち込みに止まり、23年は3.6%の堅調な成長を達成している。

 ロシア経済の好調さは軍需の増大による国内製造業の成長に牽引されたものであり、国民福祉の増進にはつながらないが、一時的には安定的な経済運営を可能にするものと言えるだろう。ロシアの産業、財政にとって非常に重要な鉱業(特に石油・ガス)も産出量は減少しているものの、国際価格が侵攻により急騰したこともあり、収入の減少は限定的であることも寄与している。

 鉱業の成長率は、22年は0.6%の成長、23年はマイナス2.0%であった。これもまた意外なほどダメージは限定的であったと言うべきだろう。

ロシアの天然ガスはウクライナ侵攻以降、どこへ行くようになっているのか(lyash01/gettyimages)

 ロシアの侵攻への制裁として、従来ロシア産原油とガスの主要顧客であった欧州はロシアからの原油・ガス輸入量を大幅に削減した。20年の欧州のロシアからの原油およびガス輸入量はそれぞれ1億3820万トン、1849億立方メートル(㎥)であったが、23年は3240万トン、692億㎥とそれぞれ76.6%、62.6%もの大幅な減少となっている。

 しかしロシアの原油・ガスの輸出量全体を見ると、20年は2億6000万トンと2392億㎥、23年は2億4080万トン、1381億㎥であった。ガスこそおよそ1000億㎥、42.3%の減少となっているが、原油についてはわずか2000万トン、7.4%の減少に止まっている。

 ロシアの原油・ガス輸出が欧州の大幅な削減にもかかわらず大きな減少に見舞われていないのはそれ以外の国が輸入を拡大したためである。批判のやり玉に挙げられるのが中国とインドであるが、実際、この両国によるロシア産原油・ガスの輸入状況はどのようなものなのか、以下分析してみよう。


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