原発に回帰するしかないドイツ
エネルギー価格、電気料金が高止まりし、ドイツ経済が低迷する中2月23日の総選挙を迎える。現在の各党の支持率は次の通りだ。CDU/CSU30%、AfD22%、SPD17%、緑の党13%、ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)6%、左派(Left)5%、FDP4%。
次期政権の主体になると考えられるCDU/CSUの選挙キャンペーン資料「ドイツのための政策変更」には、第4世代、第5世代の原子力技術、SMR、核融合の研究を続けることを優先させる。さらに、最近閉鎖された原発の再開を検討すると明記されている。
CDUのフリードリヒ・メルツ党首は、インタビューに応え「SMRを、フランスと共同で建設するか検討中」とし、議員からは「原子力の選択肢の維持は国益にかなうし、SMRの新技術が利用可能であれば、使うべきだ」との発言も飛び出している。
AfDは、ドイツの脱原発政策を180度変更することを主張し、FDPは、原子力の研究推進を訴えている。
これからの電力需要増の時代を風力と太陽光発電だけで脱炭素を維持しながら供給することは難しいとの指摘がある一方、既に閉鎖された原発を稼働させることは実務的に困難との指摘もある。閉鎖した原発の再稼働は難しいとしても、次期政権はSMRを含めた原発の新設の検討に踏み切ることになるだろう。
原発の利用に踏み切るにせよ、短期的な電気料金高騰の対策にはならない。このためCDU/CSUは、政権奪取後の15の対策の最初に、電気料金の1kWh当たり5ユーロセントの引き下げを掲げている。家庭用だけに適用した場合には80億ユーロ、産業用まで含めると135億ユーロ(約2.2兆円)必要とされる。
SDPは、送電費用を6.6ユーロセントから3セントに減額し電気料金を抑制するとしており、補助金合戦の様相だが、2年前に閉鎖せず原発の稼働を続けていた場合には、この値下げ額の一部を節約できた。
日本は、ドイツとは異なり、幸い再稼働を待つ原発を持つ。電気料金を抑制し、安定供給実現の道はあるが、脱炭素の時代に将来の電力需要増に応えるためには、原発の新増設も必要だ。
ドイツの参入により、技術の国際競争は厳しさを増すだろう。電力市場自由化により新規電源への投資が難しくなった状況下、国は新規電源導入と研究開発を支援する必要がある。
山本隆三 (著) ¥1,650 税込
