原発閉鎖後、化石燃料価格の下落を反映し、電気料金は多少下がったものの、以前のレベルには戻っていない。たとえば、産業用電気料金は、21年前期と24年前期を比較すると、使用量によるが30%から32%上昇している。やはり欧州内では極めて高いレベルだ。
21年前期からの産業用電気料金の推移は図-2の通りだ。EU平均と比較するとドイツの料金が高止まりしている理由には原発の閉鎖もあげられる。
エネルギー価格が高止まりしていることもあり、ドイツ経済は苦境に喘いでいる。化学関連企業などエネルギー多消費型産業からは、エネルギー価格が安い国への工場移転を検討する声も聞こえている。移転先としてあげられるのは、主要国の中ではエネルギー価格が世界一安価と言える米国だ。
価格上昇に加え、原発の停止により発電量も不足し、ドイツ南部はフランスなどからの電力輸入に依存するようになった。かつては、ドイツ北部で余剰になった風力発電の電気を周辺国に輸出し、電気の純輸出国だったが、原発閉鎖後は電気の純輸入国に転じた(図-3)。
増える電力需要をどう支えるか
ドイツを含め西側主要国では、家庭でも産業でも省エネ機器の利用が広まったこともあり、電力需要は減少気味だった(図-4)。しかし、生成AIの利用増により大量のデーターセンターの建設が必要になり、それを支える電力需要の増加が予想されるようになった。
たとえば、米国の電力需要はこれから大きく増えるとの予想も出ている。米エネルギー省の予想は、40年時点で今から最大16%の伸びだが、AIと共に電気自動車など電化が大きく進展すると予想する研究者などは数十%以上の大きな伸びを予想している。
これだけの伸びを支える発電設備が建設されるか不透明なこともあり、アマゾン、グーグルなどの大手テック企業は、既存原発、SMRによる脱炭素の安定的な電力供給確保に乗り出している。