2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年5月23日

 シャープがテレビ用の液晶パネル生産からの撤退を決めた。1991年に量産を開始してからの合計赤字は1.9兆円に及ぶという(「シャープ、遅すぎた液晶撤退戦 30年の累計赤字1.9兆円」日本経済新聞2024年5月18日)。 ジャパンディスプレイも14年3月の株式上場後、赤字は10年連続となっている(「『負け組』JDI、年内量産立ち上げの次世代OLEDが『われわれの将来を担う』」EETimes24年5月14日)。

テレビ用の液晶パネル生産からの撤退を決めたシャープ。積み重なった赤字は大きい(つのだよしお/アフロ)

 一時は世界を席巻した日本の半導体メーカーも凋落し、三菱電機、日立製作所、NECから分離されたルネサス、東芝を母体とするキオクシア、ソニーしか残っていない。ソニーはカメラの光学素子で特殊用途半導体である。

 サムスン、インテルなど世界の巨大半導体メーカーの売上高は10兆円以上で、日本勢はトップでも1兆円規模である。他に、トヨタ自動車、デンソー、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行などの出資で設立されたラピダスがあり、23年から工場を建設しているが、まだ一つも半導体を生産していない。

 財務省の諮問機関である財政制度等審議会で提示された資料によると、日本政府の半導体産業への支援は欧米各国と比べて極めて手厚い。日本が経済安全保障の観点から過去3年間の補正予算に計上した半導体産業への支援額は3.9兆円で、国内総生産(GDP)の0.71%である。米国の0.21%、ドイツの0.41%、フランスの0.2%、英国の0.04%より格段に大きい。

 内訳では、半導体受託製造世界最大手で熊本県菊陽町に工場を建設した台湾積体電路製造(TSMC)に対する1兆2080億円と、次世代半導体の国産化を目指すラピダスの9200億円が大きい(「日本の半導体支援、GDP比で米欧上回る 3年で3.9兆円」日本経済新聞2024年4月9日)。


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