2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年5月1日

 日本人は、最近は円安が嫌いになっているらしい。「円安が貿易収支の赤字圧力となっている。2023年度は5兆8918億円と3年連続の赤字となった。資源高は一服したものの、円安は輸入額を上げる方向に働く。原油など輸入品は円を売って換金したドルで取引することが多く、円安に拍車がかかる要因ともなっている」という記事があった(「円安が貿易赤字圧力 エネ輸入額押し上げ 昨年度、3年連続」日本経済新聞2024年4月18日)。

止まることを知らない円安だが、すべての経済事象を円安要因とすれば、思考停止となる(AP/アフロ)

 この記事は、当然ながら、貿易収支を円建てで考えている。ドル建てなら、円が上がろうが下がろうが関係ないからだ。

 貿易収支なら輸出も考えなくてはいけないが、輸出のドル建ても変わる理由がない。すると、ドル建て輸入もドル建て輸出も為替レートで換算して円建てにしているだけである。

 極端な場合を考えて、1ドル100円から1ドル150円に円安になると貿易収支はどうなるだろうか。ドル建てでの輸出を1兆ドル、輸入を1.2兆ドルとしよう。すると、1ドル100円の時の輸出は100兆円、輸入も120兆円で貿易収支は20兆円の赤字である。1ドルが150円になれば輸出は150兆円、輸入は180兆円になる。貿易収支は30兆円の赤字と拡大する。分かりにくいので、同じことを表にしておく。

 貿易収支が現在赤字なら、確かに円安によって円建ての赤字は増える。しかし、現状がもし黒字なら、円安で円建ての黒字は増えるだろう。また、円の価値がドルで減少しているのだから、これを赤字が増えて大変だというべきだろうか。

 貿易赤字がどれだけ大変かという指標として、輸出に対する赤字という指標がある。貿易赤字をどれだけ輸出でカバーできるかという指標である。

 これで見ると、貿易収支が20兆円の時は100兆円の輸出で割って0.2である。貿易収支が30兆円の時は150兆円の輸出で割ってやはり0.2である。


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