2024年7月16日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年5月1日

通商の赤字は経常収支で考えるべき

 さらに、赤字をどれだけ輸出でカバーしているかが大事なら、貿易だけに依らないサービス(旅行等)、所得の受取/支払いなども含めた輸出入を考えるべきである。これは経常収支=財・サービス輸出・海外からの所得の受取-財・サービス輸入・海外への所得の支払を考えることになる。

 財・サービス輸出・海外からの所得の受取は1.8兆ドル、財・サービス輸入・海外へ支払は1.6兆ドルとする。1ドル100円なら財・サービス輸出・所得の受取は180兆円、財・サービス輸入・支払は160兆円となり、経常収支は20兆円の黒字である。

 1ドル150円なら財・サービス輸出・所得の受取は270兆円、財・サービス輸入・所得の受取は240兆円となる。経常収支は30兆円の黒字となり、1ドル100円の時の20兆円より増大している(これらの数字は1ドル100円の時の円建てで、現実に近い数字を入れている)。こちらも表にしておく。

 以上の計算は等式の左辺と右辺に同じ数字を掛けただけだから、大きな数字を掛ければ、左辺がマイナスならマイナスが大きくなり、プラスならプラスが大きくなるだけのことである

機械的な計算ではなく考える

 以上の試算に対し、そんな機械的な計算は間違っている、円が動けば輸出も輸入も動くという批判があるだろう。この批判は、日経記事にも当てはまるものだが、機械的に考えないとどうなるかを考えてみよう。

 機械的に考えないと複雑になるので、財・サービル輸出/輸入・所得の受取/支払を財の貿易と同じように考えられるとして、輸出はすべて自動車、輸入はすべて原油とする。

すると、

 経常収支=1.8万ドル(自動車1台の価格)×1億台-80ドル(原油1バーレルの価格)×200億バーレル=1.8兆ドル-1.6兆ドル=0.2兆ドル

 1ドル100円であれば、

 経常収支=180万円(自動車1台の価格)×1億台-0.8万円(原油1バーレルの価格)×200億バーレル=180兆円-160兆円=20兆円

 1ドル150円であれば

 経常収支=270万円(自動車1台の価格)×1億台-1.2万円(原油1バーレルの価格)×200億バーレル=270兆円-240兆円=30兆円

 ここで円が動いても原油の販売量を同じにしておいたのは、原油の円建て価格が上がっても、あまり節約する余地はないからだ。ガス料金や電気料金やガソリン代が上がっても、使わなければ生活できないし、工場も稼働しないのだから価格上昇を受け入れるしか仕方がない。しかも、政府が補助金を出して値段を抑えてくれているのだから、なおさら節約する必要がない。


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