2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年3月19日

 連邦地裁が審理を通じ、これまでに政権の意向に待ったをかけたケースは、ここ2カ月間だけでも、以下のようなものがある:

・2月7日、トランプ大統領が司法長官に対し、大統領が直接関与したとされる「連邦議事堂襲撃・占拠事件」捜査を担当した連邦捜査局(FBI)捜査官たちの名前の公表と解職を指示した事案について、ワシントンDC連邦地裁判事(レーガン共和党政権時に拝命)が一時差し止め命令

・2月7日、大統領が国内で生まれた外国人に市民権を与える「出生地主義」を行政命令で否定したことについて、ワシントンDC連邦地裁判事(オバマ民主党政権時に拝命)が「憲法違反」だとするカリフォルニアなど4州の州司法長官の訴えを支持し、命令を却下。ホワイトハウスが直ちに控訴したが、ここでも却下の判断下る

・2月10日、トランプ政権が各大学、がん予防センター、病院などに対する助成金削減措置を打ち出した事案について、マサチューセッツ連邦地裁判事(バイデン民主党政権時に拝命)が原告側の主張を受け入れ、50州全州における助成金削減を一時差し止め命令

・2月11日、移民受け入れの推進団体が同じ案件で大統領を相手取って起こした訴訟について、マサチューセッツ連邦地裁判事(G.W.ブッシュ共和党政権時に拝命)がこれを認め、大統領の措置を一時差し止め命令

・2月21日、イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省」スタッフが人員削減目的で財務省の連邦職員給与体系に関する機密データに強引にアクセスしようとしたことについて、ニューヨーク連邦地裁判事(バイデン政権時に拝命)が一時差し止め命令

・2月25日、全米非政府組織(NGO)協議会がトランプ政権下でこれまでの補助金を打ち切られたとして起こした訴訟で、ワシントンDC地裁判事(バイデン政権時に拝命)が、「補助金支出は連邦議会が承認したものである」として政府当局に全額払い戻しを命令

・2月27日、連邦人事管理局が試用期間中の政府関連職員の正規採用取り消し措置を打ち出した事案について、ワシントンDC地裁判事(クリントン民主党政権時に拝命)が「不当判断」を下し、措置は差し止め

・3月10日、連邦議会の承認を得ていない「政府効率化省」スタッフ間の業務上のメールでのやり取りは「情報公開法」の対象だとして政府監視団体が起こした訴訟で、ワシントンDC地裁判事(オバマ政権時に拝命)がこれを支持、同省スタッフにメール内容を即時公開するよう命令

最高裁はどう判断するのか

 これに対し、トランプ大統領は13日、こうした一連の地裁レベルにおける行政措置差し止め令のうち、市民権賦与に関する「出生地主義」事案について、「米国民でもない外国人居住者に市民権を与えることは国益に反する」として、最高裁に上訴した。

 最高裁は9人の判事のうち、共和党系判事が6人(このうち3人はトランプ前政権時に拝命)で多数を占めていることから、大統領としては最終的に、自ら推進する諸政策が予定通り実施できることに期待をつないでいる。

 大統領はさらに今後、それ以外の事案に関する地裁裁定についても、最高裁に上訴し、自らの主張の正当性にお墨付きを得たい考えだ。

 そしてもし、最高裁が地裁判断をつぎつぎに差し戻し、棄却した場合、トランプ氏は最終的にフリーハンドが与えられたことになり、これに勢いを得て他にもつぎつぎに専横的措置を繰り出してくる可能性も否定できない。

 ただ、争点となっている事案の中には、市民権「出生地主義」否定のように、合衆国憲法に抵触しかねない問題もあるだけに、果たして共和党系とされる最高裁判事全員がそれまでも黙認するかたちで支持に回るかどうかは微妙な問題だ。

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