2025年3月20日(木)

トランプ2.0

2025年3月10日

 内外政策をめぐる米国のトランプ大統領の〝暴走〟ぶりに歯止めがかからなくなっている。独断的執政を許す背景にあるのは、衰えを見せない「唯一超大国」としての比類なきアメリカン・パワーにほかならない。

トランプ大統領の施政方針演説では、すでに行われた〝決定〟を自画自賛した(代表撮影/ロイター/アフロ)

枚挙にいとまながない「決定」

 20世紀後半、冷戦時代の世界は、米ソ両超大国に支配され続けた。ソ連崩壊後、超大国はアメリカ一国となった。21世紀、今度は中国の台頭により、「米中両超大国時代」の幕開けと騒がれた。ところが今や、中国の躍進にも陰りが見え始め、再びアメリカだけが我が物顔に闊歩する「唯一超大国」時代に入ったとの見方が広がりつつある。

 1月20日ホワイトハウスに返り咲いて以来のトランプ執政の独断専行ぶりは、まさにこの揺るぎなき最強の軍事力、経済力を誇るアメリカン・パワーを後ろ盾にしたものだ。「トランプ2.0」は、大統領個人としてのリーダーシップ、資質、能力とは関係なく、たんに“虎の威”を借りたにすぎない。

 就任わずか1カ月たらずの間の大統領の破天荒な振舞いは、以下の通り枚挙にいとまがない:

〈外交・国際関係〉

・隣国カナダについて「米国の51番名の州にするべきだ」と唐突に発言、カナダ国民の怒りと反感を招いている

・中東パレスチナ人の居住地であるガザ地区について、「住民を移住させ、米国主導で立派なリゾートにしたい」と提案、ガザ住民はもとよりヨルダン、サウジラビアなど、イスラエル以外のほとんどの中東諸国が反対している

・第二次世界大戦後、一時的に米国が保有、1970年代にパナマに返還されたパナマ運河を再び同国から取り返す意向を表明

・北欧グリーンランドをデンマークから購入し、豊富な天然資源の本格的開発に意欲を見せ、同国首相、住民が猛反対

・400年以上にわたり世界で認知されてきた「メキシコ湾」の呼称について、一方的に「アメリカ湾」に変更する大統領命令を発動。呼称変更を拒否したAP通信社に対し報復措置として、ホワイトハウス執務室、大統領専用機内取材から同社記者を締め出し

・世界保健機関(WHO)からの一方的撤退

・気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」からの再度の離脱

・各国の反対をよそに米国際開発庁(USAID)解体決定と同時に1万人近くの職員に対する退職勧告。米国の途上国開発援助計画そのものが危機的状況に

・ロシアとの休戦協定に向けて早期締結を急ぎ、戦争を停止させるためのウクライナに対する強圧的アプローチ


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