2025年3月26日(水)

トランプ2.0

2025年3月10日

 さらに、USB銀行の「25年中国経済見通し」によると、今年度の中国GDP伸び率は、トランプ政権による対中国追加関税などのあおりを受け、4.0%となるほか、26年は3.0%にまで減速する見込みだという。また、これに付随して、消費者物価指数(CPI)上昇率も本年度0.1%、来年度0.2%を見込んでいる。このほか、過剰投資による不動産不況も、経済成長の足を引っ張っている。

 中長期的に見て、中国の成長に影を落としているのが、人口動態だ。とくに、少子高齢化の進行、中でも消費意欲の旺盛な若年層の減少は今後、経済のみならず、社会全体に大きな影響を与える恐れがある。

以前から根付いていた「唯一超大国」論

 この点に関連して、『Unrivaled: Why America will Remain the Sole Superpower』(無敵:アメリカのみが唯一超大国にとどまる理由)の著者として知られる政治学者マイケル・ベックリー・タフト大学准教授はすでに4年前に、有力オピニオン誌「Foreign Affairs」に寄稿した興味ある論文の中で以下のように述べている:

 「やがて米国は、巨大で拡大するマーケットを持つ唯一の国となるだろう。世界トップ20カ国経済大国の中で、今後50年間、20~49歳労働人口が増加し続けるのは、オーストラリア、カナダ、米国の3カ国のみとなる。他の17カ国においては、この死活的に重要な年齢層の人口が集中的に平均16%減少すると見込まれる」

 「例えば、中国の場合、20~49歳の労働人口は2億2500万人減となるが、これは現在規模の36%を占める。同様に、日本は42%、ロシア23%、ドイツ17%それぞれ減少する。インドは40年までは増加を続けるが、その後は急激に減少に向かう」

 「これに対し、米国は10%増となる。米国市場は第2位以下5カ国合わせた規模に匹敵しており、ほかのどの国よりも対外貿易及び投資依存度が低い。今後はさらに、主要追随諸国が委縮する中で、米国が世界経済成長に果たす役割はより拡大し、同時に国際貿易依存度は減少するだろう」

 「さらに今後、(中国、ロシアなど)敵対国の軍事力増強は人口の急速な高齢化に足をすくわれ、その分米国にとって強固な同盟諸国の必要性も減退する。50年までに、ロシアの場合、高齢人口のための年金、医療補助関連支出はGDPの50%近くに、中国は現在の3倍に膨れ上がる。米国は35%増程度にとどまる。ロシアと中国はまもなく、軍隊のための大砲か膨張する高齢者のための杖のどちらかという厳しい選択を迫られることになるが、結局、国内騒乱予防のために後者を優先せざるを得なくなることは歴史が証明している」

 もちろん、実際に20~30年後の世界情勢がこの通りに推移していくかどうかは、誰にもわからない。

 しかし、外交・通商面で同盟諸国との関係を軽視し、「米国ファースト」主義を強引に推し進めようとするトランプ執政は、上記のような「唯一超大国」論の延長線上にあることだけは確かだろう。

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