2025年4月9日(水)

MAGA解剖

2025年3月3日

 外交トップの国務長官には、初のラテン系となるマルコ・ルビオ(53歳)が就任した。ルビオは並外れたキャリアを歩んできた。1999年にフロリダ州議会選に立候補し、2000年の本選で民主党候補を破り見事に当選。28歳の若さだった。02年には院内総務になり、08年まで再選され、10年に上院選で当選した。両親はキューバ出身だ。16年の大統領選に立候補したが、地元フロリダ州での予備選でトランプに大敗し、選挙戦から撤退した。選挙運動中、自分の父親がウェイターとして複数のホテルで粉骨砕身働いて、家庭を支えてくれたことを語っている。

実は親日のルビオ。対中強硬策が日本に飛び火しないといいが……(THE WASHINGTON POST/GETTYIMAGES)

 16年の選挙ではトランプと意見の相違があったが、その後は忠誠を示し、トランプ再選のために全米で活動し、選挙資金を集めた。トランプの高関税政策を支持するなど、経済政策に関しても同調している。その一例として、ルビオは24年3月、中国製輸入車に一律2万ドルの関税を課す法案を提出している。

 外交政策の考え方は16年当時と比べるとトーンダウンしたが、彼は完膚なきまでのポピュリストであり、伝統的な保守派でもある。

 トランプは第一次政権時にキューバに対して厳しい姿勢で臨んだが、ルビオ自身も根っからの反共産党である。親の出身国であるキューバに対してとりわけ厳しく、「民主主義と正義を守り続けなければならない」と述べ、中国やベネズエラ、ニカラグアとともに痛烈に非難している。その姿勢にトランプは、〈勇敢な戦士〉と称賛しているほどだ。

 ルビオはかつて、ウクライナ支援を支持していたが、支援継続決議の一つに反対票を投じている。それはトランプに対する忠誠の「試金石(litmus test)」であったことを理解していたからだ。しかし、トランプと違い、ルビオは人権を重んじており、中国の人権侵害を罰するための徹底的な経済制裁には賛成している。それは、中国政府の弾圧により国際的にも批判されている新疆ウイグル自治区の労働力を使って作られた製品について、米国への輸入を禁止する法律の共同提案者であったことにも表れている。

 トランプがルビオを国務長官に任命したのは、米国が現在直面している2つの外交チャレンジ、つまり対中強硬政策と、メキシコなどとの国境問題に関して、短期的には彼が最適だと考えたからだと言われている。特に、ラテンアメリカからの不法移民を強制送還させるには、適任だと考えられた。

 ヘリテージ財団のケネス・ワインスタイン日本部長は「ルビオはカトリックでトランプに忠誠心を持っているが、『直感的な政治家(instinctive politician)』だと言われている。一方、ワシントンでは、『用心すぎる(overcautious)』性格だとみられている」と語る。

 前述の通り、ルビオは当初トランプの「米国第一主義」の考え方と相違があった。例えば、トランプが議会の承認なしに独断で北大西洋条約機構(NATO)から離脱できないようにする法案を共同提出している。しかも16年の予備選でトランプに挑戦したことで、トランプ政権人事に深く関係しているトランプ・ジュニアの反感を買い、いずれ国務長官から追放される公算が高い。

 外交面では、他国に干渉しないというトランプやヴァンス副大統領の「一国主義」ではなく、中国に集中すべきであるという「優先主義者」である。これは、エルブリッジ・コルビー国防次官やマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)と同様の立場だ。


新着記事

»もっと見る