1月24日にルビオが中国の王毅共産党政治局員兼外相と電話会談をした際には、中国が台湾周辺や南シナ海で軍事的圧力を強めていることを〈威圧的行動〉であると痛烈に批判し、早速火花を散らしている。
トランプが矢継ぎ早に署名している大統領令の中に、選挙中声高に主張していた、中国からの輸入品に対する60%の関税は含まれていない。ルビオは、トランプが高関税を「交渉を有利に導くための取引材料、交渉のカード(bargaining chip)」として使うことを理解している。
「力による平和」は
トランプ考案の概念ではない
ルビオは声明の中で、「トランプ大統領のリーダーシップの下で、我々は『力による平和(peace through strength)』を実現し、常にアメリカ人とアメリカの利益を何よりも優先する」と述べた。「力による平和」は4世紀にラテン語で「Si vis pacem, para bellum(平和を望むなら戦争に備えよ)」として出現しているが、概念そのものは2世紀のローマのハドリアヌス帝にまで遡る。ジョージ・ワシントン初代大統領はこのことを十分理解していた。
19年から21年まで国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエンはこう語る。
「ロナルド・レーガン大統領は、デタントは冷戦そのものの解決にはならないとし、外交戦略でソ連と真っ向から対立する『力による平和』の道を選んだ。選挙運動中にこのハドリアヌス帝の言葉をそのまま借用して、実際に大統領になったあとも実行に移している。だからトランプが新しく考案した概念ではない」
トランプは“My proudest legacy will be that of a peacemaker and unifier.”(私が最も誇るレガシー〈政治的遺産〉は、平和の構築者になることと団結させる者になることである)と就任演説で述べたが、平和構築のためには「力、軍事力(strength)」が必要だ。ルビオはそれを最もよく理解している。
ルビオは中国に対する姿勢とは真逆で、実は親日である。尖閣諸島について、曖昧な言葉を使う米国の政府高官は多いが、ルビオは日本の領土であることを明言している。上院における承認公聴会では「中国共産党は最も強力で危険な敵だ。台湾侵攻の代償が大きすぎると中国側に思わせることが重要だ」と証言した。
厳しすぎる対中姿勢の反動として、今後、日本に対し中国とのデカップリングを要求する可能性がある。このことを念頭に置き、日本企業の経営者は自社の中国事業への影響を点検しておくべきだろう。
