2025年2月14日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年1月22日

 トランプ大統領就任は中国にどのような影響をもたらすのか?

 その最初の影響は意外な形でもたらされた。就任直後、即座に関税を引き上げことが明らかになったことを受け、為替レートが人民元高に振れたのだ。トランプ大統領は選挙期間中、就任後即座に関税を引き上げ、中国製品には全品目に60%の関税をかけると主張していた。その後、自身が創設したソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」において「すべての中国製品に対して、関税を10%引き上げる」とも主張していた。

 大統領選終了後、関税引き上げ前に輸出しようと駆け込み出荷が相次いだ。その影響によって昨年末のアジア発米国向けコンテナ輸送量は12月期の過去最高記録を更新していた。

 就任前から早くもトランプ政治に振りまわされた格好だ。もっとも今後、どのタイミングで関税引き上げが実施されても不思議ではないだけに、貿易関係者が気をもむ展開は続きそうだ。

 トランプ大統領の劇場型政治については、中国人も熟知している。中国SNS「ウェイボー」をみると、「電子ザーサイが戻ってきたな」というコメントが目についた。

 ザーサイは中国の漬け物、つまりご飯のおともだ。転じて、電子ザーサイとは食事時に手放せないドラマなどのデジタルコンテンツを意味する。トランプ大統領の一挙手一投足がニュースとなり、中国でも大きく報道される日々が帰ってきたという意味となる。

トランプ氏によるビットコイン高騰が中国で話題となっている(ロイター/アフロ)

 確かにトランプ劇場の話題性は高い。ウェイボーのホットトピックには人民元高と就任式に加え、「トランプ大統領、TikTokの所有権は米企業が50%を持つべきと発言」「トランプ大統領、就任後100日以内の訪中希望」など日本の大手メディアで報じられているニュースもあれば、「暗号通貨業界に激震、37万人がロスカット(一定の損失が発生した場合に保有しているポジションを強制的に決済して損失を確定させること)」というトピックまで入っている。

 最後のトピックについてはほとんどの読者が初耳だろう。トランプ大統領は就任式直前の17日に自身の名前をつけた暗号通貨「$トランプ」を発行した。トランプ大統領が暗号通貨に好意的な姿勢を示してきたことに加え自身の通貨を発行したことに、暗号通貨コミュニティは好感を示し、「TRUMP」に加え、ビットコインやイーサリアムなど他の通貨も価格が上昇した。

 ところが19日にメラニア夫人の通貨「$メラニア」が発表されると、今度は逆に暗号通貨全体が急落した。インサイダー取引などの不正が問われる可能性が懸念されたとみられるが、激しい値動きによって全世界で37万人以上が強制ロスカット(中国語は「爆倉」)に追い込まれたと推計されている。


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