2025年2月7日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年1月22日

 米国で働く中国人、今後米国に移民することを計画する中国人にとっては、未来が見えづらい激動の時代が到来している。

中国政府はトランプにどう対応するのか

 さて、ここまでは一般の中国人から見たトランプショックを描いてきた。今度は政治のレベル、習近平総書記と中国共産党はトランプ大統領誕生をどのように見ているかを考えてみたい。

 とはいったものの、現時点では判断する材料には乏しい。大統領選が終わった後も中国からは目立った反応がなく、まだ姿勢を明確にしていないからだ。

 そうした中で、印象的なエピソードがある。先日、ある中国大手IT企業関係者と話す機会があったのだが、彼は「2025年は中国経済高成長の一年になる」と予想していた。まだ経済低迷の底が見えていない状況に加え、トランプ大統領による関税引き上げというリスク要因もあるのに……と不可解に思ったが、彼に言わせるとトランプ要因こそ中国経済高成長のカギなのだという。

 昨年秋以来、習近平政権は経済対策を大々的に打ち出すと表明してきたが、地方政府の債務対策や金融機関の体力強化といった守りの姿勢ばかりで、経済成長を促進する攻めの対策は出していない。トランプ大統領がどのような対中政策を出してくれるか、それがどれほど大きな影響を与えるのかを見極めた後に、攻めの対策を打ち出すのだという。この対策は、トランプショックによるネガティブな影響を打ち消す以上の景気浮揚効果をもたらすだろうと予言していた。

 半信半疑で聞いていたが、彼以外にも同様の見立てを披露する人に数人であったので、こうした見方は中国内でも一定の支持を得ているようだ。

 3月に開催される全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)で、中国政府は新たな経済対策を発表する。その内容については昨年末の中央経済工作会議でほぼ固まっているはずだが、3月までのトランプ大統領の動きによっては対策を積み増す可能性はあるのかもしれない。

 何をしでかすかわからない、劇場型政治がトランプ大統領の真骨頂。その動きに振りまわされ、過剰なまでに警戒を余儀なくされる。その意味では一般の中国人も、中国政府も同じような立場に置かれていると言えそうだ。

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