中国では暗号通貨の取引は非合法。海外の取引所を経由しての売買も禁じられているが、実際には手軽な海外投資ツールの一つとして購入している人も多い。いきなりのトランプショックで一財産を失った中国人も相当数いるようだ。
トランプをもっとも恐れているのは……
さて、ここまで紹介した就任初日のちょっと笑えるような騒動(財産が消えた人は笑えないだろうが)とは違い、深刻に悩んでいる人もいる。
もっとも深刻なのが在米の華人華僑、そして今後の米国移民を計画している中国人だ。第1期トランプ政権では中国への対決姿勢を強め、技術面での安全保障を強化した結果、中国人に留学ビザや労働ビザが発給されないケースが多発した。
今回も同様の動きが広がるのではないかとの不安が広がっている。一部の大学では在籍する中国人留学生に対し、クリスマス休暇に帰国したとしても大統領就任式までには米国に戻るよう通達したことが明らかになっている。トランプ大統領誕生後は入国管理政策が変更され、米国の大学に在籍している留学生でさえ入国を居されるリスクがゼロではないとの判断からだ。
また、すでに米国企業で働いている中国人の間では、前回のトランプ政権同様に締め付けが厳しくなり、安全保障での疑いがかけられるぐらいならば、中国に帰国したほうがいいのではないかとの考えも広まっているという。
これらの悩みは在米の中国人コミュニティに限定されたものだが、米国全体で注目を集めたのが高度人材の労働ビザ、H-1Bビザの発給規制だ。トランプ大統領は不法移民に対して厳しい姿勢をとることはよく知られている。中南米経由の密入国ルートは今後、取り締まりが強化されることは間違いない。また、強制送還も徹底するだろう。
裏道の移民ルートが狭くなることは確実として、正門はどうなるのか未知数だ。中国人の米国移民の理想的なプランといえば、大学でコンピューターサイエンスを学び、H-1Bビザを取得することであった。しかし、バンス副大統領はH-1Bビザによって米国に移住した外国人によって米国人労働者の賃金が引き下げられていると主張、規制を強化する方針を訴えている。
一方、イーロン・マスクらトランプ政権内でもテック右派と呼ばれる勢力は逆にH-1Bビザの拡大を主張している。米国の強みであるテクノロジー、イノベーションを発展させるためには、さらに多くの高度人材が必要だというのだ。
優秀な人材は不足している。中国人移民を排除したところで、それに代わる人材が米国にはいないとの主張だ。
トランプ政権はMAGAと呼ばれるトランプ支持層、テック右派、そして伝統的な共和党保守層などが相乗りして成立しているが、各派閥の主張には違いも多い。トランプ大統領がどの派閥のどの意見を取り入れていくかによって、政策は大きく変わるだろう。