2025年4月1日(火)

Wedge REPORT

2025年2月27日

 主要な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの価格が高騰している。昨年11月、米大統領選でトランプが勝利してから上昇基調が続き、大統領に就任した1月20日には、史上最高額となる10万9000ドル(約1680万円)を突破した。

「トランプ劇場」に色めく暗号資産業界。その行方は……(REUTERS/AFLO)

 就任直前の1月17日には、トランプ自身が公認の記念暗号資産「$TRUMP」を発行した。一気に話題をさらい、時価総額が一時150億ドルを超えるまでになった。そして就任3日目には、暗号資産の利用を推進する大統領令に署名。暗号資産が米国のイノベーションや経済発展に重要な要素になると強調し、ホワイトハウスに暗号資産諮問委員会の作業部会を設置することを明らかにした。

 まさに暗号資産狂騒曲である。

 そもそもトランプは暗号資産を「詐欺だ」と発言していたが、大統領選が本格化していた2024年6月、暗号資産専門家らとフロリダの邸宅で会談してから180度変節。「米国を暗号資産世界の首都にする」と宣言した。

 第一次トランプ政権時の政府関係者は、「トランプには、選挙戦で暗号資産に理解のある若者の票を確保したい狙いや、バイデン前政権が行ってきた暗号資産への締め付け強化政策へのアンチテーゼもあった」と言う。ただ、トランプには個人的な「金儲け」の思惑があることは間違いないだろう。加えて、「Make America Great Again」実現のために暗号資産を有効活用しようとしているのは確かだ。

 米国は今、大量の暗号資産を保有している。米連邦保安官局は、犯罪などで押収した暗号資産を国庫に保管しているが、その額は時価2兆円を超える。これを戦略的国家デジタル資産備蓄として、備蓄を拡大しながら高い価格を維持し、政府として効果的な使い方を模索している。

 暗号資産交換業大手ビットバンク(東京都品川区)のマーケットアナリストの長谷川友哉氏は「トランプ大統領は、将来的に価格が上がるという前提で政策を進めており、アメリカ政府の債務をオフセットするというところが大きな目的のひとつになっている」と言う。

 もちろん価格が暴落する可能性もある。トランプ政権で米国証券取引委員会(SEC)の次期委員長に指名されているポール・アトキンス氏は筆者の取材に、「アメリカは、暗号資産業界が安全に成長し、拡大し、革新し、市場でソリューションを提供できるよう、業界に確実性を与える方法を持つべきだ」と述べ、暗号資産の有効活用と安全性拡大を目指すと語る。暗号資産諮問委員会の作業部会にも入る予定のアトキンス氏は、トランプ氏から暗号資産を有効活用するための政策立案も期待されることになる。

 前出の元トランプ政権政府関係者は、「アメリカではこれから暗号資産を投機目的だけでなく国家の戦略として認識している。さらにAIによるイノベーションに暗号資産との親和性がよく、銀行口座を持てない自律型AIが暗号資産を使って経済活動を行うことも想定されている。ただ、暗号資産の価格の安定化など政府が取り組む規制が重要になり、トランプ政権はAI発展に向けてそのことを視野に入れているのではないか」と話す。


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