2025年3月31日(月)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年2月25日

 第二次トランプ政権発足後、米国の主要な対外援助機関である国際開発庁(USAID)の将来が不透明になっている。1961年に設置されたUSAIDは400億ドル以上の予算を管理する機関だが、トランプ大統領はUSAIDを国務省と統合する計画を進めているとされる。トランプの側近で、政府効率化省(DOGE)で非公式の立場から政府支出の削減策を検討しているイーロン・マスクも、USAIDを閉鎖すると発言している。

トランプ政権が進めるUSAIDの〝削減〟で、世界はどうなってしまうのか(AP/アフロ)

 そして、2月2日にはUSAIDの公式サイトがいったんアクセス不能となり、2月3日には同庁職員は庁舎に入らないよう指示された。また、2月4日に、USAIDに直接雇用されている人員は全世界的に休職処分となるとUSAIDの公式サイトで発表された。

 2月23日には、職員約1600人の削減と、それ以外の職員の大半は23日深夜から休暇に入るよう指示された。USAIDは約130の国・地域で事業を展開しており、1万人以上の職員を擁しているとされるが、トランプ大統領はそれを約600人に絞り込む計画だと報じられている。

USAIDのHPでは、職員の休暇が伝えられている

 米国は世界最大の対外援助の提供国である。USAIDは数十年にわたり国際開発で重要な役割を果たしており、人道支援、経済開発、保健事業など、途上国を中心に様々なプログラムを展開している。その使命は、世界の安定と繁栄の促進で、貧困、疾病、政治的不安定などの問題を解消することだとされる。

 USAIDは東日本大震災の際に被災地に消防署員を中心とした捜索・救援チームを派遣するなどしたが、諸国家や国際機関、非営利団体、民間企業などと連携しつつ、米国のソフトパワーを高める役割を果たしてきた。また、途上国でHIVやマラリア、結核などの蔓延防止策を採り、安全な水の確保や経済発展支援も行うなどして、過激派の影響力拡大を抑え、国際的な安全保障を高める役割を担ってきたとされる。

 このような役割を果たしてきたUSAIDを、何故、トランプらは敵視しているのだろうか? そして、トランプは単独でUSAIDを解体することができるのだろうか? USAIDの規模が縮小されると、どのような影響が及ぶのだろうか? 本記事は、これらの問題について検討することにしたい。


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