2023年12月10日(日)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2023年3月12日

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唐木英明 (からき・ひであき)

東京大学名誉教授

1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部教授、日本学術会議副会長、倉敷芸術科学大学学長などを経て現職。著書に『不安の構造 リスクを管理する方法』(エネルギーフォーラム新書)。

 新型コロナウイルスの流行発生以来3年間続いた規制がやっと緩和されて、3月13日からマスク着用が個人の判断に任されることになった。止めるのか続けるのか、街の声は分かれている。

(maroke/gettyimages)

 続ける理由は感染防止、同調圧力、顔を出すのが恥ずかしいなどだ。止める理由は、マスクは嫌い、国の方針などだ。もしマスクが感染リスクを下げるのであれば続けるべきだが、なぜ変更になったのだろうか。そもそもマスクの効果はどれほどのものだろうか。

マスク「義務化」の経緯

 2019年末に中国武漢でコロナ感染が発生し、20年に入ると横浜港に入港したクルーズ船での集団感染、国内での感染拡大と死亡者の発生という事態が続いた。専門家が連日テレビに出演してコロナの恐ろしさを訴え、瞬く間に国民の多くがコロナ恐怖症に感染した。

 当時はワクチンも治療薬もなく、感染対策はマスクと行動制限しかなった。日本には国民の行動を制限する法律がないので、国はマスクと行動制限を「推奨」し「自粛」を求めた。

 恐怖症に感染した多くの人がマスクこそが感染を防ぐと信じ、交通機関も商店も人が集まる施設もすべてマスクを義務化した。そしてマスクをしない人は他人にコロナを感染させると批判され、マスク警察までが出現した。人々はマスクを買い求め、在庫はすぐになくなり、不安は大きくなり、当時の安倍晋三首相は国民全員にマスクを配布することを決定した。

 こうしてマスク神話が出来上がり、国の「推奨」にすぎないマスクが実質的に「義務化」になり、現在に至るまで多くの人がマスク着用を続けている。


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