2024年4月20日(土)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2023年3月12日

 マスクにも選択の自由がある。誰もが他者の選択の自由を認めるべきだ。そんな意見もある。これは正論だが、マスク着用に当てはめることは難しい。

 選択の自由が成立するのは、誰にも実質的な被害がないときである。例えば、添加物の安全性は確保され、健康被害はない。だから添加物を受け入れる自由もあれば、拒否する自由もある。そしてどちらも他者に損害を与えることはない。

 しかしマスクは違う。マスク神話を信じる人は、マスクをしない人が自分に感染させることを恐れる。そして自分の健康を守るために、他者の自由を認める余地はない。

 このような被害者意識があることから、飲食店や接客業の従業員はマスクを外すことは難しい。それではどうしたらいいのだろうか。

マスク着用し続けるのは国の責任

 他人が止めなければ自分も止められない。そんな状況では国の号令で一斉に止めるしかない。そもそもマスク神話を作ったのは国なのだから、神話を解消する責任は国にある。

 ところが国の態度はあいまいだ。卒業式では校歌などを歌うなど大声を出すとき以外はマスクを着けないことを「基本にする」という。厚労省も「病院や高齢者施設ではマスクが有効な場面もある」とし、飲食店や交通機関などでは「利用者または従業員にマスクの着用を求めることは許容される」としている。さらに、「周囲の方に感染を広げないために、マスクを着用しましょう」、「ご自身を感染から守るために、マスク着用が効果的です」とも書いている 。

 厚労省専門家会合はコロナの分類変更するにあたって、感染症対策の「五つの基本」を発表した。①自宅療養・医療機関受診、②マスク・せきエチケット、③三密回避・換気、④手洗い、⑤適度な運動・食事である。そして「マスクの着用は、感染を広げない効果に加えて自らの感染リスクを下げることにもなる」と述べている。

 会合に提出された「マスク着用に有効性に関する科学的知見」と題する資料は前述の総説論文を引用しないだけでなく肝心の結論を明記せず、全体を通してマスクが有効であるという印象を与える構成になっている。結局、国は国民がマスクを止めることを止めているとしか考えられない。

 国が「マスクには感染防止効果がある」と言い続ける限りマスク神話は続き、国民はマスクを外すことに後ろめたさを感じる。最新の科学を取り入れて、「感染防止効果はない」と明言すべきだ。欧米で実施していることを日本でできないのは「今まで言っていたことはウソなのか」と非難を受けることを恐れているためだろう。

 しかし、いまこそ「過ちて改めざる。これを過ちという」という論語の言葉を思い出すべきである。

 最後に、海外の例を見ると大きな流行の後で感染者数の大幅な減少が起こっている。楽観的な見方をすれば日本もその時期である。5月に予想される第9波以後、感染者数が大幅に減少すれば、やっとマスク神話は消えていくことになるだろう。

 
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