新型コロナウイルス感染症の第7波で、日本の感染者数は連日15万人を超え、30万人に迫る日もある「世界最多」の状況が続いている。この数字をどう解釈したらよいのか。日本の対策(政策)は間違いだったのか、それとも正しかったのか。
単に数が多いということに振り回されず、現実を直視し、「正しく怖がる」ことを身に着けたい。何が成功で、何が失敗で、そこから何を学ぶべきなのか。考えたい。
世界と比べ犠牲者少ない日本
新興感染症の対策で最も重要なのは、犠牲者、つまり死者を出さないということであろう。早期に発見し、適切に対応して重症化を防ぐということがカギを握る。その意味で日本の感染対策は、検査態勢が十分ではないにせよ、数字的には、うまくいっているといえるだろう。
財団を設立し、世界の感染症対策に力を入れるマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「日本の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)による死亡者数は、高齢化率が非常に高いにもかかわらず、米国、英国などに比べ低く抑えられ、うまくいっている」と評価している。
累積の感染者に対する死亡者の数(死亡率)は世界平均で1%程度(2022年8月18日時点)。米国1.1%、英国0.8%に対し、日本の死亡率は0.2%となっており、さらに過去1年間でみると、0.13%まで下がっている。
しかし、こうした結果は、必ずしも日本政府が感染対策をうまく回したということではない。多くの日本人は、この結果に満足していることはなく、経済活動の回復も中途半端、医療対策も中途半端という印象を持っている人が少なくない。データを分析し、それを活用して、政策実行に移すダイナミックさに欠けている感は否めない。
医療関係者は、常に医療ひっ迫を訴えているように見える。新型コロナ感染症が日本で広がって2年半経過しているにも関わらず、大胆で包括的な病床確保策、発熱外来の整備、中等症と重症患者の的確な選別などは十分ではない。
第5波と比べて、第7波の重症者数のピーク数は3分の1以下の最大で630人前後(22年8月18日現在)で推移しているにもかかわらず、爆発的な感染者増に現場は対応できていない。
現行の感染症法では、新型コロナウイルスは、SARS(重症急性呼吸器症候群)、結核などと同じ「2類」相当に分類されていて、それが医療現場に過度の負荷をかけているとの声も強い。症例の全数把握のための報告義務、入院できる施設は指定医療機関に限られていること、などが背景にある。
無症状や軽症患者の多い現状を踏まえ、全数把握が必要なく、入院できる医療機関が限定されない「5類」にすべきという意見も多いが、そう簡単に柔軟な対応ができないのが日本の現状だろう。