2022年11月27日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年6月28日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 新型コロナウイルスの感染追跡アプリを流用し、抗議デモを計画した人々を公衆衛生の名の下に軟禁する。これぞ「デジタル監視社会」という事件が中国で起きた。しかも、事件のきっかけとなった銀行のとりつけ騒ぎもあるフィンテック・サービスをきっかけとしており、「デジタル化先進国・中国」の現状を象徴する事件となった。

新型コロナウイルス追跡サービス「健康コード」の感染対策以外での利用が明らかになった(AP/アフロ)

抗議デモ開催日に健康コードが「赤」表示

 河南省鄭州市は6月22日、馮献彬(フォン・シエンビン)鄭州市委政法委常務副書記、市新冠肺炎疫情防控指揮部社会管控指導部部長ら官僚5人に解任などの処罰を与えたことを発表した。

 問題となったのは、中国の新型コロナウイルス追跡サービス「健康コード」の濫用だ。このサービスは移動記録、訪問記録、交通機関の利用記録を統合、分析することで、ある住民の感染リスクを緑、黄色、赤の3段階で表示する。地域によってその運用ルールは一部異なるが、原則としては黄色になると一定期間の自宅隔離かPCR検査による陰性証明を取得するまでは公共の場を訪問することはできない。赤になると隔離が要求されるという仕組みになっている。

 このコロナ対策の仕組みが治安維持のために流用されたことが明らかとなった。

 発端となったのは銀行の取り付け騒ぎだ。今年4月から河南省の禹州新民生村鎮銀行、上蔡恵民村鎮銀行、柘城黄淮村鎮銀行、開封新東方村鎮銀行、そして安徽省の固鎮新淮河村鎮銀行で預金が引き出せなくなる、取り付け騒ぎが起きていた。預金者たちは地元住民に加え、別地域の人々も含まれている。河南省の省都である鄭州市では預金返還を求める抗議デモが何度も開催された。

 6月中旬にもまた抗議デモの開催が予定されていたのだが、そこで事件が起きた。健康コードの機能の一つに「場所コード」と呼ばれるチェックイン機能がある。駅やショッピングセンターなどの場所ごとにQRコードが用意されており、それをスマートフォンで読み取ることで場所の訪問履歴を残せるという代物だ。

 その場所コードで異変が起きた。現地に乗り込んだ抗議者が高速鉄道駅や高速道路の検問でチェックインすると、健康コードは赤が表示され、立ち入りを拒否されたのだ。抗議者たちは大人しく出発地に戻るしかなかった。

 赤コードを与えられたのは現地を訪問した抗議者だけではない。問題の銀行の預金者が他地域にいながらも鄭州市高速鉄道駅にチェックインしたところ、やはり健康コードが赤に変わったという。

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