中国の政治、経済にとって最重要課題である雇用の確保に黄信号が灯っている。特に若年層の失業率は18.4%と、調査開始以来最悪となった。習近平総書記が続投を狙う党大会が秋に控えるなか、中国は厳しい状況に追い込まれている。
中国にとって雇用確保は最大の使命
中国経済の減速が続いている。2021年全年の経済成長率は8.1%という高成長を記録したものの、四半期別で見ると第3四半期は4.9%、第4四半期は4%と急ブレーキがかかった。今年第1四半期は4.9%と回復傾向を見せたが、そこで直面したのがオミクロン株の流行だ。
上海市のロックダウンは3月末から2カ月以上にわたり続いた。現時点でも感染ゼロは達成できておらず、日常的なPCR検査の義務化や一部地区の封鎖など、日常生活を取り戻したとは言いがたい。上海市以外の地域でも感染が散発しており、強力な感染対策は経済低迷につながっている。
中国政府は今年の成長目標を5.5%と設定しているが、世界の調査会社は達成困難だとみている。ブルームバーグ・エコノミクスは2%、ゴールドマンサックスは4%に予測値を引き下げており、成長目標との乖離は大きい。
もっとも「そもそも成長目標とはなんぞや」と不思議に思っている方も多いだろう。経済は生き物であり、アクシデントはつきもの。成長目標が達成できなくても仕方がない、毎年毎年目標を達成できるほうが不思議ではないか。目標を作っては帳尻合わせしているだけではないか、と。
当然の疑問だが、中国の成長目標はむやみに決められているものではなく、雇用の必要性から決定されている。毎年、全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)で経済目標は発表されるが、セットで発表されるのが都市新規就業者数目標だ。むしろ雇用確保が主であり、この目標を達成するために経済目標が設定されていると言っても過言ではない。
2010年代初頭には「保八」(8%成長死守)が盛んに議論された。8%を割り込めば、十分な雇用が容易できず、これを不満に思った人民が政府批判の姿勢を強め、ひいては中国社会の安定が損なわれる……とまで極端な議論が展開されていた。いささか乱暴な話ではあるが、雇用確保が中国にとってどれだけ重要なのかを示すエピソードではある。