2024年12月9日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年6月8日

 家電や自動車の他、食料や一般消費財の流通網に大きな影をおとしている上海の都市封鎖は6月1日の午前0時をもってほぼ解除された。市民の9割にあたる2200万人以上が、封鎖期間中は必要だった外出許可証無しで、居住区から出ることができる。外出の自由を手にしたわけだ。

上海の「ロックダウン」はほぼ解除されたが、PCR検査が街中で行われるなど〝日常〟にはほど遠い(ロイター/アフロ)

 世界中の人々が3月28日以降上海で始まった出来事のことを「ロックダウン」と認識しているが、実は上海市政府が5月30日に「ほぼ解除」を発表した通知の中に、中国語でロックダウンを意味する単語の「封城」という言葉は一言も出てこない。

「封鎖管理」「静黙期間」と言い換え

 まずは5月30日の政府発表のタイトルをみると「住宅地の出入りと公共の交通機関の運行などを回復させる」とある。また半月前の5月16日の会見では条件つきではあるが、生産活動や市民生活を6月中に正常化させると述べていた。筆者の知る限り、3月28日以降の記者会見で上海市政府は市民の行動を制限する措置について「封城」という表現を使っていない。

 「大規模PCRに伴う封鎖管理」「静黙期間」など、その時々で言い回しを巧みに変えながら事実上のロックダウンを続けてきたわけだ。「封城」という言葉を使っていない以上、上海市政府からすれば「ロックダウン」を解除するという宣言は必要ない。それゆえ、「回復」や「正常化」という言葉が表にたっている。

 市民の大多数がロックダウンと〝認識〟している中、なぜ上海市政府はここまで頑なともとれるスタンスを続けるのかと誰しも疑問に感じるだろう。実は上海市政府は3月28日の〝封鎖管理〟開始の前に、2度「封城」の実施を否定している。国際経済都市の上海がロックダウンすれば中国だけでなく世界に大きな影響がでるなどと述べていた。

 さらに上海がロックダウンされるとの「ウソ」をネット上で広めたとして公安当局が当事者を摘発。そんな状況下で、やっぱりロックダウンすると言ってしまえば、今度はそこまでにきった「大見え」が「ウソ」になってしまう。メンツが重んじられるこの国で、口が裂けても「封城」とは言えなかったのかもしれない。


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