2022年6月27日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年5月30日

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 近年日本でも注目されるようになった中国・新疆ウイグル自治区における人権抑圧の問題は、当面ロシアのウクライナ侵略の陰に隠れた感があるものの、依然として深刻である。

国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) のバチェレ代表が訪れても、中国共産党は全く異なる「人権」概念を掲げる(新華社/アフロ)

 このような中、5月23日から28日まで、国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) のバチェレ代表が中国を訪れたが、それと前後するかたちで日米欧のメディア連合から「新疆公安ファイル」が公表され、ウイグル族などイスラム教徒の少数民族への弾圧の生々しい実態が改めて示された。

 果たして中国は、人権抑圧の証拠を前にして自らの問題を認め、自発的に少数民族や国際社会との関係を改善する方向に動くのだろうか。結論から言えば、少なくとも現在の中国共産党(以下中共と略す)政権が続く限り、それは決してあり得ない。何故なら中共は今や、全く異なる「人権」概念を掲げ、外界との合意可能性がかつてなく薄れているからである。

改めて明らかになる凄惨な弾圧

 今回公表された「新疆公安ファイル」は、新疆現地公安局のパソコンをハッキングした内容が米国の非営利団体・共産主義犠牲者記念財団のエイドリアン・ゼンツ氏に提供され、日本の毎日新聞・NHKを含む世界14のメディアが事実関係を精査のうえ、情報の信憑性と社会的意義に照らして公表したものである。

 この中では、例えば2016年8月から昨年末まで中共新疆ウイグル自治区委員会書記(=新疆の最高権力者)を務めた陳全国が17年5月に放った「海外からの帰国者は片っ端から拘束せよ」「(拘束対象者が)数歩でも逃げれば射殺せよ」といった発言が強く目を惹く。また、趙克志・国務委員兼公安相が「過激な宗教思想の浸透が深刻なグループは、新疆に200万人いる」と認識していた点が注目される(毎日新聞、22年5月24日)。

 17年以後、新疆で明らかに異常な事態が起こっていることは、米国ラジオ自由アジア(RFA ) やBBCを中心としたメディアが辛うじて現地から入手していた情報、そして国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) 及び米国ニューヨーク・タイムズが19年11月16日にスクープした新疆秘密文書から明らかになっており、筆者(平野)のみたところ、今回明るみになった内容は必ずしも目新しいものではない。とはいえ、大量の被害者の写真データや個人情報、そして弾圧に関わった指導者の具体的な発言によって、弾圧の経緯や実態をより詳細に補強できるようになったという点で大きな意味がある。

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