バイデンのアメリカ

2022年1月11日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「現政権の対中国戦略はトランプ時代のコピーにすぎない」――。バイデン政権発足とともに、日本含め内外メディアはこんな判を押したような見方を広めてきた。だが、これは明らかに的外れだ。

(ロイター/アフロ)

トランプの〝公約〟は果たされておらず

 「バイデン大統領は最近になって、対中政策にフォーカスした厳しい姿勢を打ち出し始めた。だが、方法論の違いこそあれ、実体はトランプ氏のタフな姿勢を踏襲したものだ」――米ウォールストリート・ジャーナル紙は昨年6月、こんな内容の解説記事を掲載した。

 それを読むと、トランプ氏が大統領就任当初からあたかも、中国の外交、経済政策、人権問題などを一貫して手厳しく批判し、対抗上、相応の大胆な対中措置に終始したかのような印象を読者に与える。ワシントン・ポスト紙など他の多くの有力米紙でも、「バイデン現政権は内政はともかく、少なくとも対中政策ではトランプ前政権のスタンスと大同小異」といった論調が目立った。日本のメディアも、同様の見方が大半だった。

 確かにトランプ氏は、2016年大統領選出馬当時、全米各州遊説先の演説会場で「わが国はこれまで、中国による安価な製品、農産物の輸出攻勢で〝レイプ〟されてきた」「自分が当選の暁には、慢性的貿易不均衡に終止符を打つ」「工場労働者のジョブを中国から取り返す」「中国によるわが国の知的財産権窃盗行為に対し、断固たる制裁措置をとる」などと威勢のいい対中批判に終始してきた。

断固たる措置どころか賛辞を披露

 ところが、実際にホワイトハウス入りしてからの4年間に、これらの約束が守られたものは一つもない。

 それどころか逆に、対中貿易不均衡は最初の2年間に拡大し、米国内の工場労働者数は増えるどころか減り続けた。中国側の対米不公正取引やサイバー攻撃も目立った。

 トランプ氏個人の言動も、17年大統領就任以来、豹変し、習近平指導体制の中国について、批判どころか、以下のように賛辞を何回となく披露してきた:

 「習近平主席との首脳会談で築き上げられた2人の関係は素晴らしいものとなった。今後、2人は何度でも親しく話し合うことになっており、個人的にも私は、両国間の幾多の困難な問題もことごとく解決していくだろうと思っている」「習氏とその側近たちは、会っていてとても好感の持てるものであり、これからも両国関係がより一層進展していくことになるだろう」(17年4月、フロリダ州自己所有別荘での初の米中首脳会談)

 「中国はこれまで、米中貿易で不釣り合いな利益を得てきた。だが、だからと言って、中国を非難することはできない。過去の米側の対応が間違っていただけであり、中国はむしろ、よくやってきたと言うべきだ」(17年11月、北京での習近平主席主催晩さん会で)

 「米中関係は私以前の歴代大統領の下では悪化の一途をたどっていた。だが、自分が大統領になってからは、問題処理のために果敢に取り組み、今日、両国関係はかつてなく良好で素晴らしいものとなった」(20年1月、スイス・ダボスの世界経済フォーラムで)

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