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Wedge OPINION

2021年12月22日

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秋元諭宏 (あきもと・さとひろ)

米国笹川平和財団会長兼理事長

慶應義塾大学法学部卒。米ハーバード大学大学院東アジア学修士・社会学博士。米国三菱商事上級副社長兼ワシントン事務所長、三菱商事理事・グローバル渉外部長などを歴任。2019年1月に米国笹川平和財団の理事長に就任、同年10月より現職。岡崎研究所コメンテーター、英・国際戦略研究所アソシエイトフェロー。

迫る中間選挙を前に、悩み深いバイデン氏はどのようにタクトを振るうのか (ANNA MONEYMAKER/GETTYIMAGES)

「民主主義の日です。歴史と希望の日です。再生と決意の日です」

 バイデン米大統領が1月、就任演説でこう訴え、民主主義の再生と米国民の団結を通じた理想的な国家像の再建を標榜してから、約10カ月が経過した。当初は多くの米国民の期待を抱いての船出だった。

 しかし10カ月が経った今、国民は文化、価値、人種などで分断され対立し、政治家は党派争いに明け暮れている。バイデン氏が演説で掲げた「自由、尊厳、真実」などの理念は、米国の政治から失われてしまったかのような状態だ。

 バイデン氏自身も民主党内の左派・急進派の発言力増大を受け、次第に左傾化が進んでいる。政権の目玉である1兆㌦規模のインフラ投資法案や1兆7500億㌦規模の大型歳出法案の推進では、90人超のメンバーを有する進歩派議員連盟「コングレッショナル・プログレッシブ・コーカス(CPC)」のジャヤパル下院議員ら左派・急進者指導部に配慮せざるを得ない状況が露呈した。

 加えて、アフガニスタン撤退時の迷走、新型コロナウイルス感染症の継続、供給網の混乱を含む経済対策の停滞などから、国民はバイデン氏の指導力に不安を感じている。リアル・クリア・ポリティクスの調査によれば、政権発足直後に約56%あった支持率は11月末には約42%に低下し、逆に36%だった不支持率は約53%にまで上昇した。

 バイデン氏は外交・安全保障面では、政権発足直後から対中政策を最大の課題と位置付け、同盟国との関係を重視し、中国に対応する姿勢を鮮明にした。民主党のアジア政策に長年携わってきたキャンベル元国務次官補を新設のインド太平洋調整官に任命し、日米同盟、クアッド(日米豪印)、AUKUS(オーカス)(米英豪)などの枠組みは前進している。日米同盟では菅義偉前首相をホワイトハウスに招く最初の外国首脳に指名し、クアッドではオンラインと実地で2回の首脳会談を行い、AUKUSでは欧州に属する同盟国の英国をアジアの枠組みに組み込んだ。

 バイデン氏は、まず同盟国との関係を用意周到に固め、その上で11月15日に初めて中国の習近平国家主席と約3時間半にわたって会談した。キャンベル・インド太平洋調整官は首脳会談の直後に、米国が同盟国と連携強化をしたことは中国に「胸やけ」を引き起こしていると述べた。一方の習氏は、バイデン氏に「イデオロギー対立、陣営構築、グループ対立」を避けるよう警告したので、同盟国重視の対中政策は中国を牽制する意味では効果があったようだ。

 これまでのバイデン政権を総括すれば、共和党との対立、民主党内の混乱により、停滞気味の内政課題は抱えるが、外交・安全保障面では一定の成果を上げたと言えよう。

〝してやったり〟の共和党
旧態依然で苦杯をなめた民主党

 バイデン政権は、年が明ければ2022年11月8日の中間選挙へ向け本格的な活動を始める。現在の議会は、上院・下院ともにわずかな差で民主党が主導権を握っている(下図)。しかし、中間選挙は政権を担う党に厳しい判断が下されることが多く、主導権が奪われる可能性があるからだ。

 中間選挙の前哨戦とされた11月2日のバージニア州知事選では、共和党の無名の新人ヤンキン候補が、14年~18年に同州知事を務めた民主党主流派の重鎮マコーリフ候補に勝利した。同州はハイテク産業が盛んな北部の都市部を中心に民主党色が強まっており、20年の大統領選ではバイデン氏がトランプ前大統領に10㌽の差をつけて勝利していた。だが、ヤンキン候補は序盤の劣勢を挽回し、共和党候補として09年の知事選以来の勝利を収めた。

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