11月18日付のForeign Policy誌で、ジャック・デッチ同誌安全保障担当記者が、台湾における米軍部隊の静かだが着実な増強を描写するとともに、米国の台湾についての「戦略的曖昧さ」の是非に対する専門家のコメントを紹介する解説記事を書いている。
目下、台湾海峡をはさむ軍事的緊張関係は緊迫の度合いを強めつつある。台湾の邱国防部長(国防大臣)が議会での答弁において、中国軍の能力について「2025年には本格的に台湾への軍事的侵攻が可能になる」との認識を示したのはつい最近のことである。台湾の軍指導部責任者がこのような具体的数字をあげたことは、大きな衝撃をもって受け止められた。
このような軍事的緊張関係を背景に、台湾において米軍部隊の静かな増強が行われつつある、というのがForeign Policy論考の趣旨である。台湾に展開されつつある米軍の規模自体はいまだそれほど大きなものではないが、静かに、しかし着実に増強されつつある、という興味深い内容となっている。実態について必ずしも詳らかではない点もあるが、このような状況が公然と議論されることは中国のあり得べき台湾への軍事的侵攻に対する抑止的効果を持つものと考えられる。
これまでの数カ月間にバイデン政権は台湾への米軍部隊を増強し、目下40人近い人員が、台湾にある事実上の米国大使館の警護と台湾兵の訓練に当たっているという。全体で昨年より2倍強となったが、ミサイル防衛の範囲の拡大は米国の台湾防衛への増大する懸念を示している。
米軍事専門家の多くは、中国の台湾侵攻の可能性はまだそれほど大きいとは見ていない。しかし中国が水陸両用部隊、極超音速ミサイル、さらにはサイバー攻撃手段などを強化しつつあることは事実であり、これらの動きが台湾への軍事的侵攻に使用されるものと見られている。