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2021年10月25日

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武居智久 (たけい・ともひさ)

日本戦略研究フォーラム(JFSS)顧問

三波工業特別顧問。元海上幕僚長。1957年生まれ。防衛大学校を卒業後、海上自衛隊に入隊。筑波大学大学院地域研究研究科修了(地域研究学修士)、米国海軍大学指揮課程卒。2014年に第32代海上幕僚長に就任。16年に退官。17年に米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェローを務めた。

「中国が6年以内に台湾に武力を行使する危険性が高まっている」。今年3月、米国のデービッドソン前インド太平洋軍司令官がこう発言し、世界に緊張が走った。米軍内にそうした「危機感がある」ことは、紛れもない事実だろう。
 4月の日米首脳会談後の共同声明には、52年ぶりに「台湾海峡の平和と安定」が明記され、それに呼応するように欧州諸国がインド太平洋地域への関与を強めた。多くの国で「最悪の事態」が想定され、備えが進んでいる。
 国際社会がこれほど敏感に察している危機を、日本が傍観するわけにはいかない──。そんな思いから開催されたのが、日本戦略研究フォーラム(JFSS)主催の政策シミュレーション「徹底検証:台湾海峡危機 日本はいかに抑止し対処すべきか」だ。国会議員や外交・安全保障の専門家、元自衛隊幹部など総勢18人がリアルなシナリオに基づきシミュレーションを行い、その反省と教訓から政策提言を行った。
「台湾有事となればじっくり考えている暇はない。スポーツと同様、日頃からの練習と訓練が物を言う。現状、日本では今回のようなシミュレーションはおろか『座学』さえ満足にできていない」。参加者の一人、元内閣官房副長官補・兼原信克氏の言葉が重くのしかかる。
 台湾有事とは日本有事である──。日本は戦後、米国に全てを委ねて安住してきたが、もういい加減、空想的平和主義から決別し、現実味を帯びてきた台湾有事に備えなければならない。
〝両岸〟関係の安定は、願っているだけでは訪れない
(SOPA IMAGES/GETTYIMAGES)

 東京・市ヶ谷の防衛省前にある日本戦略研究フォーラム(JFSS)は小さなシンクタンクである。しかし志は高く、かねてより民間レベルで台湾との交流を行い、5年前からは台湾軍(中華民国軍)の現役士官を研修生として受け入れ、日台間の安全保障交流の重要性を機会ある度に政治に対して提言するなど、安全保障における日台関係の緊密化に努めてきた。

 昨年秋、JFSSは台湾海峡危機が高まる中で我が国が安全保障問題にリアルに取り組むために、政治と国民の意識を啓蒙することを目的に台湾海峡危機に関する政策シミュレーションを行うことを決め、プロジェクトを立ち上げた。

 その後、今年3月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書が10年ぶりに台湾海峡の平和と安定について中国を名指しして言及し、4月の日米首脳会談、そして6月の先進国首脳会談でも台湾海峡の平和と安定が盛り込まれたことで、日本ばかりでなく世界で台湾海峡危機への関心が高まった。これはJFSSにとって望ましい変化であった。

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