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2021年8月23日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 新型コロナウイルスによるパンデミック(感染爆発)の発生から1年半が経過した。いまだ収束の兆しが見えないどころか、感染拡大が続いているが、この間、私たちが目の当たりにしてきたのは、“危機に弱い政府”という致命的な現実だった。そう遠くない将来、高い確率で発生することが想定されていたにも関わらず、政治は現実を直視してこなかった。その代償が、優先順位の不明確な対応であり、8月20日の時点で1万5500人を超すコロナによる死者数と言っていい。

 いまの日本にとって、パンデミックを収束させることが喫緊の課題であることはもちろんだが、私たちが直面している危機は、それだけではない。東京から南西約1800キロ・メートルの東シナ海に浮かぶ沖縄県石垣市の尖閣諸島では、いま何が起き、どのような事態が繰り返されているのか――。

(ロイター/アフロ)

 新聞各紙は7月13日、中国海警局の武装船による尖閣諸島の領海への侵入が、過去2番目に長い47時間にも及び、領海の外周である接続水域内での連続航行が150日を超えたことを伝えている。

 それに対し、加藤勝信官房長官は「極めて深刻な事態。警備に万全を期している」と発言。さらに同日、2021年版の『防衛白書』が公表され、尖閣諸島周辺で繰り返される中国の活動を、国際法で認められている無害通航には当たらないとして、初めて「国際法違反」と明記したことが強調された。

 だが、こうした政府の情報発信、メディアの報道によって、どれだけ多くの国民が、尖閣諸島をめぐって〝極めて深刻な事態〟が進行中であることを認識しているだろうか。そしてそれが心もとないとすれば、何が原因で、どこに問題があるのだろうか。

 3回にわたる本連載では、いまの日本にとって緊要の課題である“尖閣危機”を、①現下の状況 ②無策の日本 ③対中抑止力……という視点から取り上げる。コロナ対応で顕在化した政府の危機対応の甘さが尖閣危機にもたらす深刻さを指摘しながら、ひとりでも多くの読者に、尖閣という日本固有の領土を守るために、今そこにある危機と向き合う大切さ、そしてその必然性について理解を深めていただきたいと思う。

いま何が起きているのか

 接続水域内の連続航行が150日を超え、領海侵入が47時間に及んだことは、尖閣危機の1場面に過ぎない。中国・武漢を震源地とするパンデミックで、対応に汲々とする日本を尻目に、中国は2020年以降、一気に攻勢を強めてきた。

 中国軍傘下の治安維持機関である海警局の武装船(公船)は、5月以降12月までに8回、尖閣諸島の周辺海域で操業する日本漁船を追いかけ回し、「追尾」を理由に同諸島の領海に侵入、10月には過去最長となる57時間余りにわたって日本の領海内にとどまり続けた。領海と接続水域内への侵入は年間333日に達し、19年の282日を大幅に上回った。

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