2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2021年8月23日

 11月に来日した中国の王毅外相は「日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)周辺まで来ている。中国としてはやむを得ず、必要な反応をしなければならない」と言い放った。盗人猛々しいとはこのことだが、尖閣諸島の領海と接続水域において、あたかも中国の法令適用海域であるかのような行動を繰り返すことによって、領有権主張を正当化させようとする意図は明らかだ。

 さらに21年は年明けから活動を活発化させ、2月には、武器使用を含め海警局の軍事的役割を強化する「海警法」を施行し、同月13日以降7月19日までの157日間にわたって領海及び接続水域内での航行を継続した。19日で連続航行が途切れたのは、接近する台風を回避するためで、9日後の7月28日から活動を再開している。

 すでに7月末までに、海警局の武装船による日本漁船への追尾、接近は、昨年を大きく上回る15回に達し、政府関係者によると、今年に入ってから、海警は漁船が尖閣諸島に近づいてくるのを接続水域で待ち構え、漁船の動きに合わせて領海侵入するケースが目立っているという。まさに法執行の既成事実化を狙った動きだろう。

 攻勢を強める中国に対し、日本は海洋の警察機関である海上保安庁(海保)が、尖閣専従部隊を編成、2016年からは石垣市(島)に新設した警備基地を拠点に、巡視船を“対立の海”へと送り込んでいる。中国海警局は軍艦を改造した大型艦や、30㍉機関砲を搭載する武装船を含め、4隻の艦船が尖閣に進出して来ており、海保は中国に隙を突かれないよう、常に中国の隻数を上回る5~6隻体制で警戒に当たっている。

海保と自衛隊の共同作戦

 もちろん海保だけで守り切れているわけではない。筆者がWedge誌に連載していた『国防の盲点』(2017年8月号)で指摘したように、中国は尖閣をめぐって発生する恐れのある日中衝突を念頭に、定期的に3、4隻の海軍艦艇を尖閣諸島の北方100キロ前後の海域に展開している。状況が急変すれば尖閣に駆けつけるためで、この動きをにらみつつ、尖閣諸島周辺海空域の警戒監視に当たっているのは海上と航空の両自衛隊だ。

 航空機による警戒監視は午前6時半、海自第5航空群と第11管区海上保安本部(いずれも那覇)を結ぶホットラインで始動する。

 尖閣周辺海域における海保巡視船と中国海警局の武装船の動きを確認、異変がなければ、海自はP3C哨戒機を発進させ、尖閣の北方海域に展開する中国海軍の動きをウォッチする。公海上のため、海自機が中国艦艇の5キロ以内に近づくことはないが、中国艦からは頻繁に「釣魚島に近づくな」との無線が飛び込んでくる。海自機はそれを無視し、尖閣周辺の上空を経由して、石垣や与那国など先島諸島を哨戒して那覇基地に帰投する。監視飛行は朝夕2回、1回4時間を超す任務だが、1日も欠かすことはできない。

 だが、海自機による哨戒活動の妨害を目的に常態化しているのが、スホイ27など中国空軍の戦闘機による危険な急接近行為だ。中国艦からの連絡で中国・上海近郊の空軍基地から発進してくるため、航空自衛隊は海自機の哨戒飛行にあわせて、高性能レーダーを搭載した警戒機のAWACSとE2Cを上空で待機させている。中国軍機の機影が警戒機のレーダーに映ると同時に、那覇の空自第9航空団から2機のF15戦闘機がスクランブル(緊急発進)し、海自機への接近を抑止し続けてきた。


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