Washington Files

2021年4月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 中国による台湾侵攻の懸念がにわかに高まっている。危機回避のためには、わが国含め米国同盟関係の結束と抑止力強化が一層求められる。時間的余裕はあまりない。

(halbergman/gettyimages)

 「中国は台湾を軍事的に圧倒するための各種兵器及びシステムを急速に集結させつつある。私自身の見解では、その時期は多く人が理解するより切迫している。われわれは受けて立つ必要がある」

 次期米インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリノ海軍大将は去る3月22日行われた米上院軍事委員会でこう証言、これに対処するための米軍事力強化と同盟諸国の結束の重要性を訴えた。このニュースはまたたくまに世界を駆け巡り、切迫する台湾危機への関心が高まっている。

 アキリノ大将は、台湾情勢に関連し具体的に以下のような点を強調した:

  1. インド太平洋はアメリカの将来にとって最も重大な地域であり、今後もわが国の最優先舞台priority theaterであり続ける
  2. ロシア、北朝鮮そして暴力的過激組織もインド太平洋にとっての脅威であることは確かだが、台湾掌握を第一優先課題としている中国が最大の憂慮対象である
  3. 中国による台湾武力攻撃の時期に関しては、「現在から2045年の間」とするいくつかの研究がなされているが、多くの人の理解以上に切迫しているというのが私の見解だ
  4. もし、中国が台湾侵攻した場合、インド太平洋における強靭かつ信頼されたパートナーとしてのアメリカのクレディビリティに深刻な打撃となる
  5. この中国の挑戦に対し、わが国は切迫感を持って国力挙げて立ち向かう必要があると同時に、同盟諸国およびパートナー諸国にも重要な役割を期待する
  6. この地域において対中競争勝利に向けた努力の強力な具体例として「太平洋抑止力構想Pacific Deterrence Initiative」があり、この構想の下で中国軍事行動を抑止するためのより進化した軍事能力確保をめざす

 これより先、前任のフィリップ・デービッドソン司令官は退任を前に3月9日、同じ上院軍事委員会での証言で「中国による台湾侵攻の脅威は今後10年間、実際には6年で明白になる」とより具体的タイミングにまで言及し関係各国に衝撃が走った。

 後日、この点を出席議員に聞かれたアキリノ大将は、反響の大きさを考慮したためか、「6年以内にも侵攻があるとの見方には同意しない」と、前任者の発言からトーンダウンさせたが、いずれにしても、中国の台湾侵攻が時間の問題となりつつあるという認識では一致している。

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