Washington Files

2021年4月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

台湾有事における日本の対応

 そしてここで厳しく問われるのが、台湾有事における今後のわが国の対応だ。なぜなら、日本は、1972年日中共同声明で「中華人民共和国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを表明し、日本政府も、この中華人民共和国の立場を理解、尊重する……」とうたって以来、今日に至るまで、「一つの中国」の原則のもと、中国による台湾侵攻の事態を真剣に想定することをあえて避け、危機に対処する公式な議論さえタブー視してきたからにほかならない。それのみか、台湾海峡における緊張が高まるたびに、野党を中心とした「巻き込まれ論」も声高に叫ばれてきた。

 しかしそもそも、台湾有事に日本だけが巻き込まれず傍観者でいられると考えること自体、非現実的であり、幻想というべきだ。それは以下のような理由による:

  1. わが国は台湾海峡近くに尖閣諸島、台湾からわずか100キロ程度の至近距離に与那国島など戦略的要衝を擁しており、米中台湾の間で戦火を交えた場合、好むと好まざるとにかかわらず必然的に巻き込まれる
  2. 中国は台湾侵攻に先立ち、日米の反応を見るために尖閣諸島を占拠する可能性がある
  3. 尖閣諸島を奪われた場合、わが国の南西に伸びるかけがえのない領海面積が大きく削り取られることになり、自国の海洋資源の損失につながる
  4. 中国が台湾侵攻を決断し、持久戦となった場合、米軍の発信基地としての沖縄米軍基地が攻撃にさらされる
  5. 台湾とフィリピンとの間にあるバシー海峡は、日本が石油のみならず多くの天然資源を輸入する際の死活的に重要なシーレーンである
  6. 台湾海峡の有事は米国の同盟国である日韓両国にとっても重大事態であり、日本だけが“洞ヶ峠”を決め込むことは事実上、困難となる

 上記の理由などから、わが国は今まさに米国との間で、台湾有事への対処を正面から真剣に検討すべき時が来ており、この点では、去る3月16日、東京で開催された日米外務・防衛担当4閣僚協議(いわゆる2プラス2)でとくに注目すべき進展が見られた。すなわち、中国公船が領海侵入を繰り返す尖閣諸島について、「日米安保条約第5条」の適用を米側が再確認しただけでなく、尖閣諸島海域での共同訓練実施についても合意したからだ。

 一方、バイデン政権発足以来のアメリカの決然たる対中姿勢は、トランプ前政権と比較しても際立っている。

 トランプ政権下では、日米2プラス2が開かれたのは4年間を通じ2回だけ(いずれもワシントン)であり、しかも深刻化しつつある「中国の脅威」についても共同声明で直接言及したことは1度もなかった。バイデン政権では発足まもない3月に東京で4者初会合を開いたのに続き、今秋にも2回目の協議を行い、中国問題を中心にじっくり意見交換を行うことになっている。

 日米首脳会談についても、バイデン大統領は政権発足後、世界で最初の指導者として菅首相を今月16日、ホワイトハウスに招き、首脳会談に臨むほか、すでに昨年11月12日、これに先立つ菅首相との電話会談でも中国の脅威に関連し、尖閣諸島への日米安保条約第5条適用にコミットすることを大統領自ら明言した。トランプ大統領は在任中、1度も尖閣諸島防衛に言及したことはなかったばかりか、日本の防衛分担への不満を露骨に持ち出すなど両国関係をこじらせてきたのとは好対照をなしている。

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