Washington Files

2021年4月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「太平洋抑止力構想(PDI)」

 さらにわが国含め同盟諸国にとって重要なのは、両司令官が揃って、危機回避のための「抑止力向上」と同盟諸国との連携の深化の重要性を強調したことだ。

 この点で、にわかに脚光を浴び始めたのが、アキリノ大将も言及した略称「PDI」で知られる「太平洋抑止力構想」にほかならない。当面、台湾をめぐる米中激突の事態を未然に予防するためのまさに切り札とも位置付けられる。

 「PDI」は昨年12月3日、米議会が超党派で合意した「2021年国防権限法案」の一部として急遽組み込まれたもので、「台頭する中国の軍事的脅威に多方面にわたり対処することを目的とし、インド太平洋における米軍能力向上に必要なインフラ、建設投資および兵站のテコ入れをめざす」としており、そのために予算面で2022~23年の2年間で69億ドル(約7000億円)の特別支出を計上した。このうち米インド太平洋軍司令部はすでに初年度分として46億ドルを、さらに2023会計年度以降2027会計年度にかけての4年間分の「PDI」関連投資として226億ドルの大型出費を見込んでいる。

 米海軍専門誌「USNI NEWS」が入手した関連資料によると、インド太平洋軍司令部は「PDI」の作戦目標について「敵性国(中国)に対し、抜き打ち的軍事行動のコストがあまりにも高すぎ、危機の際のわが方の信頼に足る戦闘力によって失敗に至ることを理解させるため」と述べた上で、今後より具体的な努力傾注分野として、

  1. 戦力企図と態勢 Force Design and Posture
  2. 演習、実験、イノベーションExercises, Experimentation, and Innovation
  3. 統合戦力破壊力 Joint Force Lethality
  4. 兵站および多国間安保協力 Logistics and Security Enablers
  5. 同盟・パートナー諸国強化Strengthen Allies and Partners

 の5つを列挙した。このうち、同盟・パートナー諸国との関係強化については、「PDI」を盛り込んだ「国防権限法案」の条文中でわざわざ「この構想は、アメリカがインド太平洋地域における自国権益防衛のために深くコミットしているとの強力なシグナルを中国および他のいかなる敵対国のみならず、わが同盟・パートナー諸国に対しても送ることになる」と断っており、志を共有するこれら諸国との連携を前提としている点も見逃せない。

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