Washington Files

2021年4月5日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

危機を回避するための抑止力向上に日本が具体的に何ができるか?

 ただ、台湾危機回避のためには、インド太平洋司令官が強調した通り、「抑止力」向上に向けた同盟諸国との連携深化が大前提であり、対処を米国のみに任せて済む問題では決してない。

 この点で、国際的に定評のある「シカゴ世界問題評議会Chicago Council on Global Affairs」が去る2月1日、公表した米政府当局者、議会専門スタッフ、学者、ジャーナリスト900人以上の有識者を対象としたアンケート調査結果は大いに参考になる。

 それによると、「アメリカは中国の侵攻に対し台湾を防衛すべきか」との質問に対し、共和党系の85%、民主党系の63%の回答者が「支持する」と答えた。ところが、一般市民を対象とした調査では支持者は過半数を割り、40%前半にとどまった。一般市民の支持は2014年調査時(26%)にくらべ上昇したものの、いぜんとして「少数派」にとどまっている。

 このことは、もし、台湾危機に関し同盟諸国が後ろ向きの姿勢をとり続けた場合、台湾防衛に対する米国世論の支持をさらに低下させ、ひいては米軍展開にも悪影響を及ぼす結果を招きかねないことを示唆している。

 そしてそれは、2024年大統領選に向け、トランプ前政権下で盛り上がった「アメリカ・ファースト」スローガンに象徴された孤立主義路線復活にもつながりかねない。逆の言い方をすれば、アメリカが孤立主義を深めれば深めるほど、中国にとっては「台湾侵攻」の好機到来を意味することになる。

 この点に関連して、前述の上院軍事員会公聴会では、アキリノ大将に対し、何人かの議員から「なぜ、わが国は台湾を守る必要があるのか」との厳しい質問が浴びせられる場面があった。これに対し、同大将は「わが国が台湾を見捨てた場合、日本など重要な同盟諸国との間で維持してきた同盟関係の信頼性を大きく破損させ、ひいてはアメリカ主導の自由民主主義体制そのものを揺るがすことになるからだ」と説明、その場を何とか切り抜けた。

 米議会でのこうしたまっとうな疑問を払拭する意味でも、日本はじめ同盟・パートナー諸国もアメリカとの連携を深め、より真剣な対応を急ぐ必要がある。

 ついでに、わが国一部評論家での間では、「台湾危機」を論じる際、米中両国間の対決のみをとらえ「どちらが勝つか」といった物見遊山の傍観者的かつ無責任なコメントが少なからず見受けられる。しかし、今まさに問われるのは、「巻き込まれ論」を排し、危機を回避するための抑止力向上に日本が具体的に何ができるかについての、地に足のついた議論であろう。

 台湾の命運は、わが国にとって死活問題にほかならない。そして、抑止力向上に向けた応分の努力は、戦争に加担することではなく、あくまで戦争回避が目的であることを改めて理解する必要がある。

  
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